立民の亀井亜紀子氏、「政治とカネ」追い風に自民王国の壁崩す 自民の錦織功政氏「細田先生の議席守れず責任痛感」 衆院島根1区補選

衆院島根1区補欠選挙で当選を確実にし、あいさつする亀井亜紀子氏=28日夜、松江市

 28日投開票された衆院島根1区補欠選挙で、立憲民主党元職の亀井亜紀子さん(58)が、自民党新人の錦織功政さん(55)=公明党推薦=を破った。「政治とカネ」が焦点となった全国3補選で唯一の与野党一騎打ち。有権者は、岸田政権に厳しい審判を下した。投票率は54・62%で、2021年の前回衆院選(1区)を6・61ポイント下回った。当日有権者数は26万1190人。

 亀井さんの支持者は、島根県松江市の労働会館で結果を待った。比例復活ではなく衆院の小選挙区で初の当選確実の知らせに、会場がざわめいた。亀井さんはすぐに姿を見せ「重たい一票だった」と繰り返し、「島根から新しい流れをつくる」と喜びをかみしめた。

 3度目の衆院選への挑戦だった。共産党が候補者の擁立を見送った。国民民主党が県連レベルで支援し、社民党も支援を表明。事実上の野党一本化となった。支持団体の連合島根も動き、勢力を結集して厚かった「王国」の壁を突き崩した。

 一方、松江市内のホテルに集まった自民党の錦織さんを支持する国会議員や島根県議に落選が伝わると、会場は静まりかえった。2分後に到着した錦織さんは、かすれた声で「私の非力で当選がかなわず、申し訳ありません」と頭を下げた。その後「逆風は承知して出た。細田先生が長く守ってきた議席を失った責任を痛感する」と肩を落とした。

 錦織さんは1月、細田博之前衆院議長の死去に伴う党島根県連の公募で選ばれた。中国財務局長を辞して退路を断った。細田前議長を巡り世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題がある中「マイナスからのスタート」(県連幹部)だった。

 党は強力な組織戦を展開した。小渕優子選挙対策委員長が選挙戦の大半を島根で活動。水面下も含めて有力な国会議員が連日、引き締めた。岸田文雄首相も2度訪れる異例の「総力戦」を繰り広げたが、民意の波にのまれた。支持者の一人は「自民に熱心な島根だからこそ自民に落胆し、離れた」と指摘した。

 全国に広がる自民への不信を追い風にした。年明けから、自民系を含む企業を訪ねるこれまでにない活動を展開した。亀井さんの父の久興元衆院議員も島根でなじみの支持者を回った。選挙戦では、街頭演説の場に有権者の多い市街地を選んだ。徹頭徹尾、自民派閥の裏金事件を批判した。

 党は告示後すぐに島根1区を全国3補選の「天王山」と位置付けた。告示前を含めて島根に6度入った泉健太代表ら幹部が途切れず訪れた。序盤のリードを最後まで保ち、政権交代に向けて島根から一矢を放った。

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