【コラム・天風録】台湾と能登

 豆乳に酢を入れ、ほろほろになったスープは朝一番の口に優しい。夜市では香辛料の利いた焼き肉まんを頬張った。台湾への旅行中、現地ガイドから1日3食全ての外食は茶飯事と聞いた▲胃を満たし熟睡していた翌日夜明け前、横揺れで飛び起きた。台湾東部沖地震の余震は、100キロ以上離れた台北市の宿泊先にも及んだ。頭をよぎったのは4月初旬の本震の映像である▲ビル損壊や崖崩れは怖いが、避難所は日本と違った。発生から1日もたたないうちにテントが整備され、日常の外食文化をほうふつとさせる温かい食事も。温水シャワーやクリーニングの衛生面だけではない。無料Wi―Fiと、かゆいところにも手が届く▲日頃から行政とボランティア団体が連絡を取り合うらしい。必要な物資や被災者のニーズに沿い、事前に役割分担する。過去の台風や地震の教訓を生かす仕組みだ。災害大国のこちらはと、ため息をつきたくもなった▲きょう能登半島地震の発生から4カ月。行政が当初制限したボランティアは増えつつある。なりわいの再開や、復興まちづくりで東日本大震災や熊本地震の被災者が手を貸す。日本らしい助け合い文化を見せる番でありたい。

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