スペイン広場から徒歩数分で緑の楽園「ボルゲーゼ公園」を歩く〜アーバン・トレッキング in ローマ〜ローマのオアシス

ローマ旧市街の中心部に位置し、約80ヘクタールの広大な面積を誇るボルゲーゼ公園。彫刻のコレクションが有名なボルゲーゼ美術館や動物園などの観光スポットもこの敷地内にある

復活祭が終わり、いよいよ本格的な行楽シーズンがやってきた。晴れた週末には、アウトドアを満喫したい人々がこぞって海へ山へと繰り出している。観光シーズンも本格化し、旧市街は世界中からやってきたツーリストであふれかえっているが、ローマの中心部には観光スポットだけでなく、ハイキングやピクニックも楽しめる緑豊かなオアシスもある。観光やショッピングに疲れたら、自然の中に身を置いてホッと一息つけるボルゲーゼ公園を歩くのがおすすめ。今回は、ハイキングコースとしても人気のボルゲーゼ公園についてご紹介しよう。

■スペイン広場、ポポロ広場から徒歩数分に位置する緑の楽園

ローマに数ある観光名所の中でもひときわ混雑しているスペイン広場とポポロ広場。ショッピング・ストリートが集まるこのエリアはツーリストや地元民で一年中ごった返しているが、ローマのオアシスとも呼ばれるボルゲーゼ公園は、その2つの広場から徒歩数分で行ける距離にある。広大な公園には全部で9つの入り口があるのだが、ツーリストにとって最もアクセスが便利なのはピンチョの丘の入り口とメトロA線フラミニオ駅を出てすぐの場所にある入り口の2か所だろう。

スペイン階段を登り切り、トリニタ・デイ・モンティ教会を正面に見ながら左手に延びている道をまっすぐ進むと、パノラマ・スポットとして有名なピンチョの丘にたどり着く。ピンチョの丘の背後に広がる公園内には、バロックや新古典主義の彫刻や噴水、ボルゲーゼ美術館など、16世紀以後の各時代の建築、芸術品があり、森林浴とアート鑑賞が一度に楽しめるスポットでもある。一方、ポポロ広場からはサンタ・マリア・デル・ポポロ教会の脇にある坂道を登るか、ポポロ門を出た右手、メトロの駅があるフラミニオ広場にボルゲーゼ公園の入り口がある。

■17世紀に貴族の別荘の庭として造られた広大な芸術庭園

メトロのフラミニオ駅を出て左手にあるモニュメントをくぐると、なだらかな登り坂の並木道が現れる。市バスも通る公園内の大通りと、それに沿った遊歩道が並行して公園の中心部を横断しているが、遊歩道は途中から公園の中心部に向かって多方面へ枝分かれしていく。

緑の並木道を進むにつれ、車の喧騒は徐々に遠くなり、代わって小鳥たちの囀りが聞こえてくる。大通りの分岐点から車道と反対側に延びた小道を選んで歩いていくと、知らず知らずのうちにボルゲーゼ公園内の自然散策コースに出ていた。道沿いにはところどころに大理石の彫刻や噴水が置かれ、ただ歩いているだけでもなんとなく贅沢な気分になってくる。

ボルゲーゼ公園はその名の通り、もともとはローマの大貴族ボルゲーゼ家の別荘の庭園として造られたもので、16世紀にはこの敷地の中核部分はボルゲーゼ家の私有地だった。その後17世紀に、シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿が周囲の土地を買収して拡大し、建築家のフラミニオ・ポンツィオに庭園の設計を依頼。ボルゲーゼ枢機卿が後援者となっていたバロック芸術の巨匠・彫刻家のジャンロレンツォ・ベルニーニなどの芸術家も参加し、1633年に壮大かつ豪華な庭園が完成した。ちなみに、公園内にあるボルゲーゼ美術館はこのベルニーニの彫刻のコレクションが多数展示されていることで知られている。

■東京ドーム約17個分に相当する広大さ

その後数世紀に渡って公園の拡張や改造が続いたが、時代の変化とともに一貴族の庭園として維持していくことが困難となり、1901年に国によって買い取られた。その後、1903年にローマ市に引き渡され、以後、ボルゲーゼ公園はローマ市民の憩いの場として一般市民に開放されるようになった。約80ヘクタールという面積は、東京ドーム約17個分に相当する広大さだ。こんなに広い庭園の隅から隅まで、大貴族であったボルゲーゼ家の人々が歩いたとは思えないが、彼らが贅を尽くして各時代の巨匠と呼ばれる建築家や芸術家に庭づくりを依頼してくれたおかげで、今日、私たちがその恩恵を享受できているというわけだ。

ただ歩いているだけでも贅沢な気分が味わえるボルゲーゼ公園だが、敷地内にはぜひとも訪れたいスポットがいつくかある。ボルゲーゼ美術館やピンチョの丘、ローマ動物園などはローマ市内でも指折りの観光スポットとして様々な場所で紹介されているので、ここではそれ以外の見どころとおすすめスポットをいくつかご紹介しておこう。

●〈1〉アスクレピオスの神殿と湖

●〈2〉無料で近現代アートが見られるカルロ・ビロッティ博物館

●〈3〉馬術競技会も開催されるシエナ広場

●〈4〉シェイクスピア劇専用の劇場グローブ座

●〈5〉ローマのおもちゃ図書館「ラファエロの家」

© 株式会社双葉社