【コラム・天風録】FF開幕

 赤、白、黄…。平和大通りを染め上げる色の豊かさに目を奪われた。鮮やかなパレードを新緑の木々がより引き立てる。春にしては強い日差しが照明のように降り注ぎ、輝きがさらに増す。花と同じように、祭りにもふさわしい時季があると思い知った▲ひろしまフラワーフェスティバル(FF)が開幕した。コロナ禍などを経て、5年ぶりの通常開催である。沿道のマスク姿も減った。口元だけで笑顔と分かる。それが幾重にも連なる。喜びがあちこちであふれていた▲5年前にはなかった景色も加わった。22年ぶりに復活した「子どもパレード」や広島大の勇壮な行進に次代を担う頼もしさを感じた。カメラを構える外国人観光客の多さにも改めて驚く。国際色が一段と豊かになった▲47年前の創設に際し、民俗学者の田淵実夫さんが本紙に寄せた文がある。明治期までは5月初めに「花正月」などと呼ばれる風習があり、咲き誇る花の周りで村人が舞や歌に興じたらしい。FFをこの時季に催す意義に挙げ、心のつながりを求めた▲5年も待たせた神様のご褒美なのだろうか。花正月の三が日は好天の予想が続く。青く澄んだ空の下、祭りの彩りを楽しみ尽くしたい。

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