「核兵器廃絶」「復興」に強い思い パブコメ分析 長崎原爆資料館リニューアル

 2026年度以降に予定する長崎原爆資料館(長崎市平野町)のリニューアルを巡り、市はホームページ上で、基本計画の素案に対するパブリックコメント(意見公募)の結果を公開している。本紙はパブコメの傾向などを調べるため、ユーザーローカル(東京)の文章解析ソフト「AIテキストマイニング」を活用し頻出単語や特徴的な単語を抽出。すると「核兵器廃絶」や「被爆からの復興」に対する強い思いが浮かんできた。

パブコメ105件分を「AIテキストマイニング」で分析した結果。出現回数に限らず、特徴的な単語が強調された。青は名詞、赤は動詞、緑は形容詞。感動詞は除外した(画像(1))

 市は昨年11月、基本計画の素案を公表。パブコメは市内外の160人が計237件を提出した。過去の日本の戦争加害責任を含む「原爆投下に至る歴史に関する展示」への意見は過半数の132件。この点に関して市民の議論が続いていることから、これらの意見を除く105件をメインに分析した。
 まず目を引くのは、核兵器廃絶に対する強い思い。素案に記されたリニューアルの方向性に「核軍縮」という言葉が含まれたことについて、「私たちは核兵器を無くすことを求めており(中略)核軍縮については削除してほしい」「未来への希望は核軍縮ではなく核兵器廃絶だ」などと強調する声が相次いだ。
 「復興」「つながる」というワードからは「未来志向」を望むリニューアルへの期待がうかがえた。「被爆からの復興の歴史や、核兵器廃絶のために努力・貢献した人々がクローズアップされた展示などにより『自ら平和を考え、行動することにつながる資料館』になることを期待する」
 市はリニューアルについて、戦争や核兵器に関する「Cコーナー」や、ビデオルームなどがある「Dコーナー」を中心に展示を更新する方針。近年の国際情勢を踏まえ、時代やニーズに応じた展示に見直す必要があるとの観点からだ。

パブコメ全237件分を「AIテキストマイニング」で分析した結果、「原爆投下」「加害」「歴史」などの単語が目立った(画像(2))

 これに対し、原爆投下前後の長崎の街並みなどを展示する「Aコーナー」「Bコーナー」について「原爆の残虐性を示すのがA、Bコーナー。ここがあいまいでは二度とこのことを繰り返してはならないという不戦の誓いも生まれてこないはずだ」として、両コーナーの重要性を説く声が寄せられた。一方、「死蔵」というワードは1回の登場でも印象的だった。「多数『死蔵』されていると報道される遺物の調査活用を切望する」。同館所蔵の被爆資料を活用した運営を求める声もあった。
 出現回数に限らず、今回の分析対象105件に特徴的な単語も抽出=画像(1)参照=。「被爆」「核兵器廃絶」「放射線」などのワードが目立った。237件全てに特徴的な単語を抽出すると=画像(2)参照=、「原爆投下」「加害」「歴史」などが際立った。
 市はこうした意見などを踏まえ、基本計画を策定し4月2日に公開。「核軍縮」の記述を「核兵器廃絶」に改めるなど、パブコメが尊重された部分もあった。市は今月下旬、本年度1回目の同館運営審議会を開く予定。今夏には児童・生徒を含む多様な市民を招いたワークショップも開き、広く意見やアイデアを集める。具体的な展示内容や手法を検討し、本年度中にも基本設計を策定する方針。

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