いら立ち、悩み苦しんだ…それでも諦めない 自閉症児の子育て体験、一冊に綴る 公認心理師の今川さん

出版記念イベントで自身の本をPRする今川ホルンさん=川崎市川崎区の「川崎日航ホテル」

 「ことばが遅い自閉症児のおうち療育」と題する書籍を公認心理師の今川ホルンさん(40)が出版した。10日、川崎日航ホテル(神奈川県川崎市川崎区)で出版記念イベントが開催され、今川さんが著作に込めた思いを語った。障害のある子どもとの接し方について、今川さんの実体験を基に綴(つづ)られている。

 今川さんの長女は、3歳の時に自閉症、4歳の時に知的障害と診断された。長女は、他の子と比べなかなか言葉が出ず、かんしゃくを起こすことから子育てに悩み、苦しんだ。

 「娘は障害者だから仕方ない」と考え、何事も諦めてしまうことさえあった。

 小学生になった長女は、毎朝登校し、その後に今川さんが出勤の準備を始める。登校の準備に時間がかかる長女に、「あんたがぐずると私も遅くなって迷惑。早くして」といら立ちをぶつけることが増えていったという。

 「~しなければならない」という考えで頭がいっぱいで周囲からは「笑わないお母さん」と印象付けられるほどだった。

 長女が小学2年生の時に、新型コロナウイルス感染症の影響で一斉休校になった。今川さんもこのころ第3子の出産で育児休暇を取り、親子が一緒にいる時間が増えた。

 時間にゆとりができ、長女の話に耳を傾ける余裕が生まれた。登校をせかす必要もなくなり、いら立つことも少なくなった。

 徐々に互いに会話ができるようになると、少しずつ長女の行動が変化していった。自ら食事のために椅子に座ったり、先生の名前を呼べるようになったりし始めた。

 今川さんは、長女の良いところを見つけては、肯定的に捉え、話しかけるように心がけた。「自閉症は障害ではない。脳の多様性だ」と考え、今でも変わりなくそう思っている。

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