中国資本でカンボジアに運河建設、「歓迎の声」と「警戒の声」―シンガポールメディア

シンガポール華字メディアの聯合早報はこのほど、カンボジア国内で中国資本による建設が今年後半に始まるフナム・テコ運河を巡る、さまざまな見方を紹介する記事を発表した。写真はカンボジア首都プノンペンの風景。

シンガポール華字メディアの聯合早報はこのほど、カンボジア国内で中国資本による建設が今年後半に始まるフナム・テコ運河を巡る、さまざまな見方を紹介する記事を発表した。同運河はカンボジア経済に大きな恩恵をもたらすとして歓迎する意見がある一方で、環境問題への影響や中国が軍事利用する可能性を懸念する声があるという。

フナム・テコ運河はカンボジア首都のプノンペンとタイランド湾を結ぶ全長180キロ、幅100メートル、深さ5.4メートルの積載量3000トンの船舶が利用できる運河で、2028年の完工を見込む。建設を請け負う中国路橋集団は、数十年間の占有権を取得するとされる。同運河が完成すれば、カンボジアからのベトナムの港湾を通じた海運輸出が最大で70%削減できるとみられている。

ニュージーランドのオークランド大学の名誉研究者でもあるカンボジア開発研究所(CDRI)のンギン・チャンギットシニアリサーチフェローは、同運河により、カンボジアの繊維製品や原材料をプノンペンから海まで運ぶ距離が短縮され、温室効果ガスの排出が削減されると述べた。また同国の農業でかん漑のレベルが上がれば、運河沿いに暮らす160万人のカンボジア人が恩恵を受けるという。

ンギン氏は一方で、中国の投資や援助を受けてカンボジア経済が発展してインドシナ半島における同国の政治的影響力が向上することは「中国の利益につながる可能性がある」と述べ、「ベトナムと米国の関係がより密接になるにつれ、メコン地域では中米の競争によって地政学的な緊張がさらに高まるかもしれない」との見方を示した。

また、同運河の環境に対する影響を懸念する声もある。ベトナムのサプライチェーンの専門家であるグエン・フン氏は、運河によって既存の人口の流出や農業用地の喪失、湿地帯の減少が起きる可能性があると述べた。米スティムソンセンターの持続可能な開発プロジェクトの責任者であるアイラー氏は、運河によって「ベトナムの大規模なコメ生産のために使用可能な水量が減少する」と主張した。

カンボジアのスン・チャントル副首相は水資源に関連する問題について、「運河はかん漑や漁業にも使われるが、運河に使われる水の量は『大海の一滴』にすぎない。運河は最大で毎秒5立方メートルの水を海に排出するが、メコン川は毎秒8000立方メートルの水量を海に流している」「運河が環境に与える影響は小さく、ストローほどの大きさしかない」などと説明した。

メコン川については、水資源の利用と調整を行うための、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナムの4カ国が参加するメコン川委員会がある。

ソン副首相は、カンボジアはメコン川委員会に運河建設計画を通知したが、同プロジェクトについて地域の他の国に相談することはないと述べた。カンボジア政府は要請があれば、メコン川委員会に情報を追加提供する用意もあるが、そのようにする法的義務はないとした。

一方でメコン川委員会は、カンボジアに対しては数回にわたり要請し、2023年8月と10月に正式な書簡を送ったにもかかわらず、運河を評価するために必要な情報は伝達されていないとしている。

軍事面については、中国の軍艦が同運河を利用してメコン上流に進出するのではないかとの懸念も出た。スン副首相は「絶対にありえない」「われわれの憲法は、いかなる外国軍もカンボジアに入ることを認めていない」と、完全否定した。

ベトナム駐在の西側外交官も、ベトナムが安全保障上のリスクに直面しているとするベトナム人学者の警告について、運河の深さと水門の規模が限られているとして、中国に軍事利用される恐れがあるとの主張は「やや誇張されている」として、取り合っていないという。(翻訳・編集/如月隼人)

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