「2人には何の落ち度もない」ただし「特段に悪質なものとは言い難い」19歳男女2人死傷事故…執行猶予付き判決内容を詳しく【福島県】

【制限速度を超え…男女2人が死傷】危険運転致死傷の疑いで南会津町の男を逮捕・福島

鏡石町で当時19歳の男女2人が車にはねられて死傷した事故の判決公判が13日、福島地裁郡山支部で開かれました。言い渡されたのは、禁錮3年、執行猶予5年の判決…その判断理由などについて判決内容を紐解きます。

過失運転致死傷の罪で判決を受けたのは、鏡石町の無職=面川秀子被告72歳です。判決によりますと、面川被告は今年2月15日午後3時52分頃、軽乗用車を運転し、鏡石町中央245番地先の道路を時速30キロメートルで進行し、交差点の入口で一時停止の道路標識に従って一時停止しようとしました。しかし、ブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み続けてしまい、少なくとも時速約46キロメートルまで加速させ、車を暴走させ、前方の歩道を歩いていた当時19歳の男子学生に車を衝突させ、跳ね上げてフロントガラスに衝突させた上、路上に転倒させました。また、当時19歳の女子学生にも車を衝突させ、跳ね飛ばし、建物のガラスを突き破った上、女子学生を建物内に転倒させました。男子学生は頭などを強く打ち死亡、女子学生にも頭部に治療およそ90日がかかるほどの傷害を負わせました。

福島地裁郡山支部の下山洋司裁判官によりますと、1人が死亡し、もう1人も重傷を負った結果は重大としています。被害者2人は一緒に自動車教習所に通い、共に卒業試験に合格して帰宅する途中でした。不運にも事故に遭遇したもので、2人には何の落ち度もないとしています。また、亡くなった男子学生は事故により、唐突にその尊い生命と将来を奪われ、その苦痛や無念さは計り知れず、女子学生についても非常に大きな肉体的苦痛を受けた上、交際相手の男子学生が亡くなったことで強い喪失感にも苛まれているとしています。初公判では遺族も、男子学生を返して欲しいなどと述べていて、面川被告に厳重な処罰を望んでいました。

そして、下山裁判官は、面川被告に対し、自動車運転者として極めて基本的な注意義務違反したもので、過失の程度は相当に大きいとしました。ただし、危険なスピード違反やわきみ運転などと比べると、今回の事案が特段に悪質なものとは言い難いとも指摘します。その上で、施設での矯正教育以外にとるべき選択肢がないとまではいえないと判断しました。

さらに、面川被告は対人賠償無制限の保険契約に加入していて、被害の経済面で適切な賠償がされる見込みであること。面川被告が事実を認めて、被害者らに対する謝罪の言葉を述べるとともに、今後自動車を運転しないと誓約し、実際に今回の事故後、全ての自動車を処分したこと、前科や交通違反歴もないことなどから、執行猶予を付けて社会で被害者らに対する慰謝の措置を行わせつつ、更生する機会を与えるのが相当と判断しました。

こうした判断のもと、下山裁判官は面川被告に禁錮3年、執行猶予5年の判決を言い渡しました。

© 株式会社福島中央テレビ