イスラエル軍、ガザ北部ジャバリアで再び軍事行動 南部ラファでも地上作戦続く

イスラエル軍が、パレスチナ自治区ガザ北部のジャバリアに再び部隊を進めており、現地で激しい戦闘が起きていると報告されている。同軍は、ジャバリアでイスラム組織ハマスが再編成したとしている。南部ラファでも、同軍は地上作戦を続けている。

ガザ北部をめぐっては、イスラエル軍が1月にハマスの大隊を「解体」したと宣言。軍事行動を縮小した。その結果、権力の空白が生じ、ハマスの再建が可能になっていた。

イスラエル軍は12日、前日夕からジャバリアで作戦を開始したと発表。「ハマスがこの地域で、テロリストのインフラと工作員を再結集させようとしているとの情報に基づくもの」と説明した。作戦の開始前にはジャバリアの住民らに対し、隣接するガザ市の西側に避難するよう指示した。

ジャバリア難民キャンプに対しては、11日から激しい砲撃が続いている。同キャンプから避難した住民らは13日朝、戦車が前進してくるのを見て逃げたとロイター通信に説明。「どこへ行けばいいのかわからない。次から次へと避難させられて、あちこち移動する羽目になっている」と話した。

ハマスと武装組織「イスラム聖戦(PIJ)」も、ジャバリア難民キャンプとその周辺で、迫撃砲や対戦車ミサイル、機関銃を使ってイスラエル軍と戦っているとしている。両組織は、イスラエルや英米両国などからテロ組織に指定されている。

ハマス系のSAFA通信は、ジャバリア難民キャンプの市場の東側で、パレスチナ人武装グループとイスラエル軍戦車が衝突したと伝えた。付近には国連が運営する学校があり、住民らの避難所となっている。

パレスチナ自治政府の通信社WAFAは、イスラエル軍が13日にジャバリア難民キャンプの民家を空爆し、2人を殺害したと報じた。ジャバリア市街地への空爆でもけが人を出したとしている。また、救急隊員の話として、ジャバリアではこれまでに民間人20人の遺体が収容されたと伝えた。

イスラエル軍はこれについて、コメントしていない。

イスラエル軍は、ガザ市の東側のゼイトゥン地区でも、「テロリストを排除し、テロリストのインフラを解体する」ための作戦を実行していると説明した。

SAFA通信によると、同地区では13日朝にイスラエル軍の砲撃があった。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、ガザ北部での砲撃と避難命令によって「多くの家族がいっそうの恐怖にさらされ、居場所を失う事態」直面しており、「安全な行き場がない」とした。

ラファでも地上作戦続く

一方、ガザ南部ラファでは、イスラエル軍が6日に「ハマスに対する精密な作戦」を同市東部で開始すると発表して以来、きわめて厳しい状況が続いている。

ラファ西部にいるUNRWAのスコット・アンダーソン氏は13日、イスラエルの作戦が旧市街を含む「ラファの約3割」に広がっているとBBCに話した。また、現地では爆発と空爆の音が聞こえており、戦闘によって病院や難民キャンプの施設の多くが影響を受けているとした。

パレスチナのメディアによると、ラファ難民キャンプの南東にあるブラジル地区で13日、民家がイスラエル軍に空爆され、子どもを含む4人が殺害された。

ハマスは、ラファの東でイスラエル軍を標的とした攻撃を実施したとしている。

イスラエル軍の作戦がまもなく大規模攻勢に拡大するのを恐れて、避難命令の対象ではないラファ中部や西部に避難している人たちも多数、避難している。

国連は、イスラエル軍が地上攻撃を開始してからの1週間で、ラファから36万人が避難したと発表した。ラファの人口は100万人以上の避難者で膨れ上がっている。

イスラエル軍は、ラファの東側3分の1の地域を対象に避難を指示している。11日にはラファ中心部に近い地区などにも、避難を命じるチラシを上空からばらまいた。

子ども2人の母親ガーダ・エル・クルドさんは13日、ガザ中部のデイル・アル・バラフに最近避難したとBBCに話した。戦争が始まってからの移動はこれで7回目だという。デイル・アル・バラフの通りは「汚水だらけ」だと話した。

デイル・アル・バラフは、イスラエル軍が指定した「拡大人道地域」の一部。同地域は、沿岸部のアル・マワシから北に延び、ハンユニスとガザ中部に及んでいる。

イスラエル軍は、同地域には野戦病院やテント、支援物資があると避難者らに伝えている。だがUNRWAのアンダーソン氏は、必要なインフラが整っていないとしている。

世界食糧計画(WFP)によると、壊滅的な被害を受けた地域に閉じ込められている推定30万人が、支援物資が届かないために「本格的な飢饉(ききん)」に見舞われている。

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は12日、ラファでの本格的な攻撃はハマスを壊滅させられないまま、「無政府状態」を生む結果につながるおそれがあると、イスラエルに警告した。

国連職員が死傷

国連は、ラファで13日、国連の車両が被弾し、職員1人が死亡、もう1人が負傷したと発表した。ともに国連安全保安局の勤務だという。

国連は声明で、「事務総長は国連職員に対するすべての攻撃を非難し、全面調査を求める」とした。何者による攻撃で国連職員が死傷したのかについては、言及しなかった。

他方、アメリカのジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、ガザで現在起きていることがジェノサイド(集団虐殺)だとは思わないと記者団に話した。

サリヴァン氏は、「行為の意図に注目することを含め、国際的に認められた方法で(アメリカは)ジェノサイドの用語を使っている」と付け加えた。

ただ同時に、「イスラエルは罪のない住民の保護と福祉を確保するため、もっとやることがあるし、しなくてはならない」とアメリカは考えているとした。

イスラエルは、昨年10月7日のハマスによるイスラエル南部への越境攻撃で約1200人が殺害され、252人が人質に取られたのを受け、ハマス壊滅を掲げてガザで軍事作戦を開始した。

それ以来、ガザでは3万5090人以上が殺害されたと、ハマスが運営するガザ保健当局は発表している。

(英語記事 Gaza war: Palestinians flee as Israeli forces go back into Jabalia

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