600馬力超の水素エンジン車がル・マンで走行へ『リジェJS2 RH2』が加わりデモラン出走は3台に

 ル・マン24時間レースを主催するACOフランス西部自動車クラブは、サルト・サーキットで来月開催される2024年WEC世界耐久選手権第4戦『第92回ル・マン24時間レース』の決勝スタート前に、リジェ・オートモーティブとボッシュが共同開発している水素エンジン搭載車両がデモンストレーション走行に参加すると発表した。

『リジェJS2 RH2』と名付けられたこのクルマは6月15日(土)の正午すぎにワールドプレミアされ、ACOが推進する水素レーシング・プロジェクト“ミッションH24”の実験車両である『H24』とともに、サルトの名で知られるル・マン24時間サーキットを走行する予定だ。

 なお、この発表の数日前にはアルピーヌが、WEC第3戦の舞台となったベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで、水素エンジンを搭載したプロトタイプカー『アルペングローHy4』の実車を公開している。最高出力340PSを発揮するアルペングローHy4はル・マンでのデモランに先立ち、同地での初走行が予定されていたが、トラブルの発生にともない残念ながら実現には至らなかった。

 一方、すでにスパで複数回のデモンストレーションやレースプログラムを実施している水素燃料電池車のH24は、ベルギーのサーキットに詰めかけた大観衆の前で走行を披露した。

ミッションH24の2代目開発車『H24』は、予定どおりWEC第3戦スパ・フランコルシャン6時間レースの決勝スタート前にデモランを実施した

 これらのH2プロトタイプに加わるリジェJS2 RH2は、2023年のル・マンで“水素村”の住人のひとつだったが、あくまでもプレゼンテーション用のクルマだった。今年のル・マンに持ち込まれるリアルカーは3.0リットルV6ツインターボ水素エンジンを搭載し、その走りとサウンドを届けることになる。

 リジェのマシンは、アルピーヌと同じく現在は気体水素を燃料に用いるが、将来的には液体水素への転換を計画されている。現時点でのエンジンの最高出力は443kW(約602PS)。最大トルクは650Nmで、トップスピードは280km/h以上に達する。

 サーキット専用車であり、ガソリンエンジンを搭載する『リジェJS2 R』をベースとしつつ、安全性の観点から高圧水素タンクを組み込んだフルカーボンモノコックとなっているJS2 RH2。このクルマの共同開発を行うリジェとボッシュは、700バールの貯蔵タンク3つを含む水素システムの堅牢性と性能を保証するため、近年のル・マン24時間優勝車が走破した距離に相当する5000km以上の耐久テストを実施済みだ。

ベース車のリジェJS2 Rはサーキット専用車でワンメイクレースにも用いられる。搭載するフォード製3.7リッターV6の最高出力は355PS
リジェJS2 RH2のトピックはV型6気筒ツインターボ水素エンジンと、700気圧のタイプIV水素ボンベ3本を内蔵したカーボン製モノコックだ
現在、水素の貯蔵は気体状態で行われているが、リジェとボッシュはすでに液体水素システムを車両に組み込むための初期コンセプト・スタディを実施している
最高出力602PSを発揮するリジェJS2 RH2の走行イメージ
100周年を迎えた2023年のル・マン24時間レースで発表されたリジェJS2 RH2
スパ・フランコルシャン・サーキットで公開されたアルピーヌ・アルペングローHy4。現在は直列4気筒水素エンジンを搭載しているが、将来的は液体水素を燃料に用いるV6エンジンを採用する予定

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