陶磁器や書画66件 魯山人の名品、40年ぶり 関彰商事コレクション展 茨城・笠間の県陶芸美術館 

「伊賀釉木の葉鉢」(手前)を解説する主任学芸主事の岩井基生さん=笠間市笠間の県陶芸美術館

明治から昭和にかけ、陶芸や書、日本画、料理など幅広い分野で才能を発揮した北大路魯山人(きたおおじろさんじん)(1883~1959年)。希代の芸術家の創作世界を紹介する企画展「魯山人クロッシング」が、茨城県笠間市の県陶芸美術館で開かれている。展示された陶磁器や書画など66件は、いずれも総合商社の関彰商事(同県筑西市)のコレクション。40年以上公開されず大切に収蔵されてきた名品で、魯山人の知られざる美を伝えている。

京都に生まれた魯山人は、10代で「書」と出合い、独学で実力をつけ、頭角を現す。上京し、書家として活動する傍ら、食に関する見識を深め、21年に会員制料亭「美食倶楽部」を創業。後に会員制の高級料亭「星岡茶寮」を開き、顧問として料理や食器の演出に当たった。27年、40代半ばで、茶寮で使う器作りに乗り出す。北鎌倉に「星岡窯」を築き、陶磁器を本格生産。以後、多彩な技法で独創的な作品を生み出し、海外でも高く評価された。

今回の展示では、同社が40年以上収蔵してきた魯山人の名品66件を一挙に公開。陶磁器57件、漆器2件、書画5件、篆刻(てんこく)・濡額(ぬれがく)2件を紹介し、魯山人の初期から晩年をたどっている。生前の個展の出作品をはじめ、70年代の展覧会や著作に登場する作品も複数含まれており、専門家の研究の観点からも意味深い内容だ。

展示の中心となる陶磁器で、存在感あふれるのが「伊賀釉木(いがゆうこ)の葉鉢(はばち)」。幅約52センチ、奥行き約44センチと陶芸作品の中でも破格の大きさだ。盛り上がる葉脈、側面の削り痕、口縁のつくりなどから、魯山人の制作場面が浮かび上がる。

皿や椀(わん)の組み物の器にも魯山人の強い精神が感じられる。鉄絵のブドウを描いた「絵瀬戸葡萄図四方皿(えせとぶどうずよほうざら)」は5客の四方皿で、子孫繁栄を意味するブドウの房と葉が5枚それぞれに違いをもたせ、力強くも愛らしく表現されている。そのほか、朝焼けの富士を描いた絵画「富士朝暾映嶽図(ふじちょうとんえいごくず)」、中国・唐時代の詩を題材にした篆刻「晝陰静(ちゅういんせい)」なども見どころとなっている。

同館主任学芸主事の岩井基生さんは「40年ぶりに公開される貴重なコレクション。魯山人の魅力を再発見していただければ」と呼びかけている。

会期は7月7日まで。同館(電)0296(70)0011。

© 株式会社茨城新聞社