反町隆史と竹野内豊のバディもの「ビーチボーイズ」男同士の友情を描いた月9の新境地!  反町隆史と竹野内豊の月9傑作ドラマ「ビーチボーイズ」

テレビドラマのフォーマットのひとつ、“バディもの” とは?

数あるテレビドラマのフォーマットの中で、いわゆる “バディもの” といわれるジャンルが注目されることがある。その中でも特に代表作と言えるのはテレビ朝日の人気シリーズ『相棒』であり、近日映画も公開される『あぶない刑事』だったりする。

“バディもの” の多くは1対1の同性コンビ、中には異性同士のものあるが、その関係性は恋愛感情以外の仲間意識や友情、信頼で結ばれた2人が協力しながら事件を解決したり、無理難題に挑んだりといったストーリーがほとんど。ゆえに題材としては刑事や探偵ものが多く、その他いくつかのスポーツや医療ものが挙がるといった傾向だ。

“月9” ドラマに新境地を開く、別格のイケメンたちによる友情ストーリー

1997年、7月クールにフジテレビで放送されたドラマ『ビーチボーイズ』が始まった頃、世の中にはまだそんなジャンル分けは存在していなかった。またこのドラマが放送された “月9” 枠においては、前年の1996年に話題を呼んだ『ロングバケーション』をはじめとしたラブストーリーが主流であり、男同士の友情を描いた作品は異彩を放つ存在だった。

そんな中、反町隆史、竹野内豊という当代きってのイケメン俳優の2人が、オープニングのタイトルバックからTシャツ1枚で海に飛び込み、水を滴らせながら浜辺に上がってくるビジュアルインパクトは凄まじく、女性ファンはもちろんのこと、そのカッコよさに憧れた男性ファンからも広く支持されることになる。

俳優としてのキャリアを歩み始めて間もない2人ではあったが、反町は同年1月クールのドラマ『バージンロード』で、竹野内は『ロングバケーション』でも重要キャストを務め、すでに “月9” ファンにはお馴染みの存在となっていたから、両名の共演はキャスティングだけでも話題になっていた。

『ビーチボーイズ』は “男の友情” をテーマに掲げた “バディもの” でありながら、全ての放送回で20%超の視聴率を挙げる人気を集めたことで、“月9” 枠における新たな可能性を示したことは確かである。

ⓒフジテレビ

主人公はドロップアウトしたフリーター!?

反町隆史が演じた桜井広海はオリンピック代表候補にまでなったという元スイマー。ヒモ同然の同棲生活を送っていたが、彼女に家を追い出されて行く当てもなく海を目指し、元サーファーのオーナー和泉勝(マイク眞木)が経営する民宿 “ダイヤモンドヘッド” に辿り着く(そりゃビーチボーイズじゃなくてベンチャーズだろ、というたわ言は放っておくとして)。

そしてその道中で出会うのが、竹野内豊が演じるエリート商社マンの鈴木海都。チームリーダーとして関わってきた業務でミスを犯した責任を問われ、プロジェクトを外された傷心から旅に出るが、車窓から気ままに車を走らせる広海の姿にふと目が留まり、降車した駅で思わず声を掛ける。

この物語はアスリートとビジネスマン、共に一流の道を歩みながらドロップアウトしてしまった2人が出会ってからの数か月間、ひと夏を過ごしながら自らの人生を見つめ直し、新たな海に漕ぎ出そうと決意するまでの様々ないきさつを記したものである。広海と海都、育った環境も性格も異なる2人は、当初はそりが合わず何かと対立するが、多くの人たちと関わることで、相手に自分にない個性を見出し、互いに影響されて成長していく。そこには “バディもの” の原型を認めることができる。

そして、このドラマの人気を支えていたもう1人のキャストが、民宿オーナーの孫娘、真琴を演じた広末涼子である。彼女はポケベルのCMでデビューを果たすと一挙に人気に火が付き、デビューシングルがオリコン2位の大ヒット。t続く2枚目のシングル『大スキ!』ではオリコンチャート1位を獲得と人気が沸騰。勢いそのままに実年齢さながらの女子高生役を演じていた。

岡田惠和が描く、観た後に少し暖かい気持ちになる群像劇

このドラマの特徴は、ストーリーに多少のうねりは見られるものの、基本的に大きな事件もなく淡々と物語が展開していくところにある。多くのドラマは終盤のクライマックスに向けて大きな局面を迎え、徐々に視聴者の関心度も最高潮に… となるところだが、『ビーチボーイズ』はそうではない。

脚本は岡田惠和。彼も90年代のドラマ黄金期にデビューを果たした脚本家のひとりであり、2001年にはNHKの朝ドラ『ちゅらさん』で広く知られることになる作家である。彼はこの『ビーチボーイズ』に向けられた “ストーリー性がない” “盛り上がりに欠ける” といった声に対し、それらを認め「意図的にそういうドラマをつくりたかった」という事を公言している。

『ビーチボーイズ』は “バディもの” であると同時に群像劇でもある。メインの2人に限らず、主要な登場人物のそれぞれが家族や恋人、職場での人間関係などに悩みを抱えているが、なかなかあと一歩が踏み出せずにいる。それを広海が持ち前のおせっかいとポジティブさで波を起こし、アンカー役を担うのが理知的でクールな海都である。何事もすべて解決してスッキリというわけでないが、必ず誰もが前向きになれるような状況を残しながら、ひとつひとつエピソードが刻まれていく。

ⓒフジテレビ

岡田は執筆した当時を振り返って「ストーリーばかり考えることに、疑問を持ちはじめてしまって、普段ならストーリー上無駄だから刈り取ってしまうようなことを中心に書いてみたいと思ってしまった」と語っている。

アッと驚くような展開や特別なエピソードなどなくとも、観た後に少し暖かい気持ちになる。このドラマの人気にはそんな秘密があるのかも知れない。淡々とした作風から、取り立てて名セリフが見当たらないといわれるこの作品だが、物語の終盤、夏の終わりを迎えて、遠くない彼らとの別れを感じた民宿のオーナーが、2人に語るシーンのセリフが印象に残っている。

「ここは俺の海だ。お前たちにもそれぞれ自分の海ってものがあるだろう…」

決して “そろそろ出ていけ” と追い出すわけではなく、2人の若者の自発的な旅立ちを促す、物語を象徴するような温かみのある言葉である。

現在も第一線で活躍する反町隆史と竹野内豊

反町隆史と竹野内豊、主役格の俳優として数々の当たり役を演じ、現在も第一線で活躍する2人、どちらのキャリアについて語る時も『ビーチボーイズ』は必ずその筆頭に上がる作品となっている。前向きで破天荒な広海を演じた反町隆史は翌年の『GTO』で演じたキャラクターもはまり役となり、クールで知的な海都を演じた竹野内は1999年『氷の世界』で “月9” としては異例のジャンルであるミステリーに挑むことになる。

2人は順調にキャリアを積み重ね、今や会社の経営者や法の番人を演じる風格が身に着いた。先頃、物語の “その後” がリメイクされて話題となった『GTO』のように今の2人の共演による『ビーチボーイズ』ならぬ “オールドボーイズ” としての再びの共演を期待する声もありそうである。

カタリベ: goo_chan

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