【コラム・天風録】G7広島サミット1年

 時々行く広島市中心部のレストランに、英語のメニューが用意されていた。たまに来る訪日客に備えて最近つくったという。確かに、平和記念公園から離れた所でも、外国人観光客を見かけることが多くなった▲新型コロナ禍が一段落した上、歴史的な円安も後押ししている。もう一つ忘れてはならないのが、広島で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)だろう。間違いなく世界の耳目を集めた。その効果が表れている▲開幕から、きょうで1年。米国、英国、フランスにゲスト参加のインドを含めると、九つの核兵器保有国のうち4カ国の首脳が被爆地を訪れ、原爆資料館に足を踏み入れた。そのこと自体に重みを感じる▲公園内で昨年、G7の首脳が植樹した被爆桜の「二世」は一回り大きくなった。今や大人の背丈を超すほどに。とはいえ、肝心の「核なき世界」はどれほど前進したか。疑問が尽きない▲折しも、米国による臨界前核実験のニュースが飛び込んできた。資料館にある「最後の核実験からの日数」表示は再びゼロからカウントされる。核と人類は共存できない―。再スタートを強いられても、被爆地が紡いできた訴えを忘れるわけにはいかない。

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