精巧な「逮捕状」でニセ電話詐欺 茨城、被害目立つ 氏名や罪名も記載

被害者のスマートフォンに届いた偽の逮捕状の画像(県警提供)

本物と見間違うほど精巧な「逮捕状」を使ったニセ電話詐欺の被害が茨城県内で目立ち始めた。今年に入り4件発生しており、今月には約1億円がだまし取られる被害もあった。警察官などが次々と登場する「劇場型」と呼ばれる手口だが、偽の逮捕状を使うことで被害者を信じ込ませようとする狙いがあるとみられる。

県警によると、偽の逮捕状を使ったニセ電話詐欺を巡っては今月7~10日、阿見町の30代男性が警察官と検察官を名乗る男2人に計9900万円をだまし取られた。

男性に送られた偽の逮捕状画像には「罪名 犯罪収益隠匿罪」「上記の被疑事実により、被疑者を逮捕することを許可する」などの文言をはじめ、男性の氏名や生年月日、逮捕状を請求した警察官、許可を出した裁判所、裁判官の名前などを記載。朱印のようなものも押されていた。

男性は男らから「逮捕状が出ている。今すぐ出頭できるか」などと言われ、指示されたLINE(ライン)アカウントに登録したところ、偽の逮捕状や「凍結捜査差押許可状」と書かれた画像が届いた。

ひたちなか市の30代男性も4月、同様の手口で偽の逮捕状を送られ、800万円余りをだまし取られた。いずれの被害でも、犯人はマネーロンダリング(資金洗浄)事件を巡る捜査名目で被害者に連絡してきたという。

捜査関係者は、阿見町の男性に示された偽の逮捕状について「本物そっくり。一言一句ぴったりとは言えないが、かなりよくできている」と驚く。

ニセ電話詐欺でさまざまな人物が登場し、筋書きに沿って進められる手口は劇場型と呼ばれ、以前から存在するものの手口は次第に巧妙化。県警は、今後も偽の逮捕状を使った同種事案が増加するとみて警戒を強める。

ニセ電話詐欺対策室の栗山和宏室長は「法律に詳しい人でもない限り、話の流れや書類がおかしいといったことに気付くのは難しい」と指摘。ただ、捜査機関が逮捕状や捜査資料を交流サイト(SNS)上で相手に見せることはなく、「相手が(逮捕状などを)見せてきたら詐欺と覚えてほしい」と呼びかける。

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