親が身につけるべき「正しい話の聞き方・伝え方」10原則~②③【「不登校」「ひきこもり」を考える】

自らのこころの有り様を振り返ってみてもよいかも…

【「不登校」「ひきこもり」を考える】#21

②まずは、「へー」「はー」「ふーん」だけでいい

すでに現状が、お子さんが心を閉ざすまでに至っている親子関係であれば、残念ながら親御さんがいくら思いつきで頭をひねって考えたところで、どうせ見当違いなことを話すだけなのが関の山です。とんちんかんな相槌や声掛けは一言発するだけで、そもそも「親が自分の心のうちを聴く気がない」と信じ込んでいるお子さんは、「やっぱりね」と話す気を失うだけですので、最初のうちはお子さんが何を言っても、「へー」「はー」「ふーん」とうなずくだけで十分とさえ言えます。

自分の子が何を考えているかをわかっていない親御さんが、親の真意を先手必勝でわからせるという思い上がった態度は捨て、まずはお子さんが何を考えて何を感じているのか、理解することを徹底しましょう。相手のニーズを理解せずに一方的にこちらの意向を理解させるなどというのは、親子関係だけでなく人間関係の基本としても大変問題のある態度と認識しましょう。

③沈黙に負けない

沈黙が続くと、不安や気まずさからつい余計な助言や質問で墓穴を掘る人がいます。普段会話のない親子なら、たとえ沈黙があったとしても当たり前です。沈黙が続いたとしても、子どもが自室に戻らないだけでも前進と思うことです。

ましてや沈黙に焦れて、「あなたは本音ではどんな気持ちで何を考えているの?」と親から“直球”を突きつけるのも望ましくありません。さんざん傷ついてきたお子さんは、もうこれ以上1ミリも傷つきたくないと警戒して自分の殻に閉じこもっているのに、どうしてそんな危険な橋を渡るような真似ができるでしょうか? 「何もわかっていない親だ」と、さらに固く心を閉ざしかねないのです。

どうしても沈黙に耐えられない親御さんの場合、じつは本当の問題はひきこもりのお子さん以上に、先の見えない状態や不確実な場面で生じてくる強い不安や心配をコントロールできない、ご自身のマインド(専門的には「不確実性への耐性」が低いと表現される)の問題が大きいと自覚し、お子さんをどうこう言う前に自らの“こころ”の有り様を振り返ってみてもよいかもしれません。(つづく)

▽最上悠(もがみ・ゆう) 精神科医、医学博士。うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。

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