『鬼滅の刃』明かされた冨岡義勇の過去 錆兎が“託したもの”に気付かせた炭治郎の優しさ

TVアニメ『鬼滅の刃』柱稽古編第2話「水柱・冨岡義勇の痛み」では、これまで謎に包まれていた義勇の過去が明かされた。

前回のラストで珠世のもとに突如として現れた耀哉の鎹鴉。その目的は鬼を研究し、鬼舞辻󠄀無惨を倒すために手を結ぶこと。鬼である無惨を倒すために、鬼である珠世と協力する。それは大きな矛盾を孕んでいるが、ここで両者が手を組むことで、禰豆子に隠された秘密、そして鬼の真相へと近づくことになる。最初こそ疑いの目で見ていた珠世だったが、「行きましょう、鬼殺隊の本拠地へ」と愈史郎とともに産屋敷邸へと向かうことを決心する。

一方で、炭治郎のもとに耀哉から一通の手紙が届く。「どうしても独りで後ろを向いてしまう義勇が、前を向けるよう根気強く話をしてくれないか」ーーその内容は義勇が立ち直れるように手を貸してほしいというものだった。原作では炭治郎が義勇を訪れた後に挿入されている描写であるが、アニメでは構成を変えることで、よりシームレスにわかりやすくなっていたように思う。

さらに、予想通りアニオリ描写も追加されており、ここでは炭治郎が義勇に会う前に、アオイと会話するシーンが描かれた。孤独な人に孤独ではないことを伝えるにはどうしたらいいのかと相談する炭治郎に対し、アオイは「私ならそっとしておいてほしいです」と助言する。この一連の会話シーンを挟むことで、炭治郎がただやみくもに義勇と話しをしているのではなく、頭の中で考えを巡らせていたことが強調される。この描写のおかげで、後の義勇との会話シーンの持つ意味合いが変わってくるのだ。

原作と同じく義勇との会話では、炭治郎らしく無神経な質問をどんどん投げかけていく。コミカルな絵柄もあって、和やかな会話シーンが続くが、義勇の「俺は水柱じゃない」という言葉を機に空気が一変する。「帰れ」と一蹴されてしまう炭治郎だったが、耀哉の手紙を思い出し、その後も1日、2日、3日……と執拗に義勇のもとを訪れる。原作では未描写の義勇のとなりで食事をするシーンや入浴中の義勇が描かれているあたり、ufotableは義勇ファンのニーズをしっかり理解している。

あまりにもしつこい炭治郎に心が折れた義勇は淡々と過去を話し始める。13歳の義勇は親友の錆兎と一緒に最終選別を受けたが、鬼に襲われて怪我を負っていた。そこを錆兎に助けられ一命をとりとめた義勇だったが、錆兎は他の全ての鬼を倒した上で、命を落としてしまう。7日間生き延びることができた義勇は選別を突破し、圧倒的な能力で鬼を全て倒した錆兎は何も残すことなく死んでしまった。そんな状況に義勇は後ろめたさを感じていた。

だが、炭治郎はそんな義勇の心情が痛いほど理解できている。命をかけて鬼から守ってくれた錆兎。炭治郎は錆兎を杏寿郎に重ねていた。かつては杏寿郎の死を受け入れられずに、自分の惨めさに苦しんでいた炭治郎も、今は杏寿郎の思いを背負って前を向いている。「義勇さんは錆兎から託されたものを繋いでいかないんですか?」という炭治郎の言葉にハッとする義勇。彼の冷静沈着な性格からは想像できない泣き喚くシーンは、声優・櫻井孝宏の演技が光っていた。義勇を怒らせてしまったと思いあたふたする炭治郎が、考えに考えて絞り出したのは「ざるそば早食い対決」。義勇と同様に「なぜ?」と返したくなるような突拍子もないものではあるが、炭治郎なりの優しさが伝わってくる。

炭治郎の説得で、柱稽古に参加することになった義勇。ラストでは胡蝶がカナヲに胡蝶の姉であるカナエを殺した鬼の殺した方を伝えるという意味深なシーンも描かれた。胡蝶の過去も気になるところだ。
(文=川崎龍也)

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