裁判員経験者22人、死刑の執行停止を要請 執行の順番や反省の有無「実情はつぶさに公開されるべき」

死刑の執行停止を求めて会見する裁判員裁判の経験者たち(2024年5月20日、東京・霞が関の司法記者クラブで、弁護士ドットコムニュース撮影)

裁判員裁判を経験した市民22人が5月20日、死刑に関する情報公開や死刑執行の停止を求める要請書を法務大臣宛に提出した。

●全国の裁判員経験者22人が賛同

要請書を国に提出したのは、裁判員裁判で裁判員を経験したことがある、青森、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、徳島、鹿児島ーーの10都府県に住む有志の22人。

このうちの6人がこの日、法務省を訪れ、佐藤淳・官房長に、(1)直ちに死刑の執行停止すること(2)死刑に関する情報公開をはかること(3)死刑に関する複層的な国民的議論を促すことーーの3点を要請する文書を渡した。

その後、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開き、日本における死刑制度の情報不足を訴えた。

2009年に裁判員裁判がスタートしてから命を裁く事件に一般市民も関与するようになったが、死刑がどのように執行されるのかや、死刑が確定した受刑者のその後の様子など、死刑を判断するにあたっての情報が日本ではほとんど公になっていない。

要請書は、「国民に参加義務を課す裁判員制度があって、その裁判で死刑という判断も求められるのであれば、その実情はつぶさに公開されるべき」などと求めている。

●死刑に関わった元裁判員「死刑囚の日常を知りたい」

今回の活動をとりまとめている田口真義さんは会見で、2014年にも国に同様の要請書を提出したものの何の回答がないままである点に触れ、「この10年間で全く変わってない。ずっと死刑は密行主義。限られた情報しか出てこない中で執行されてきた」と強調した。

2012年にさいたま地裁であった殺人事件の裁判員裁判で、裁判員の一人として死刑判決にかかわったという60代主婦の女性は「死刑の執行がなぜこういう順番で決まったのかが全く見えてこない。死刑囚の日常とか被害者のことを思っていたのかとかをもっと知りたい」と話した。

2011年に東京地裁立川支部で強盗致傷事件の裁判員裁判に参加した高橋博信さんは「早ければ高校生で裁判員になる。極端にいうと高校生が死刑判決を下す可能性もある。重すぎるんじゃないか。一旦、執行をまずは停止して立ち止まって考えるきっかけになればいい」と語った。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

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