【5月22日付社説】介護保険料の上昇/費用抑制の対策強化したい

 負担可能な水準を保つための具体策を議論する必要がある。

 2024~26年度に県内の65歳以上の人が支払う介護保険料の基準額の平均額は月6340円と過去最高になった。保険料は3年ごとに各市区町村や広域連合が見直す。全国平均も6225円と過去最高を更新した。制度が創設された00年度の2.1倍だ。

 家族で介護を抱え込まず、社会全体で支えるのが介護保険制度の目的だ。しかし高齢化に伴いサービス利用者は3倍、介護費用は約14兆円と4倍近くに増えている。

 来年には人口の多い「団塊の世代」が全員75歳以上になり、介護が必要な高齢者は増えるのは確実だ。このままでは保険料のさらなる上昇は避けられない。

 介護サービスの費用は税金と40歳以上が支払う保険料、原則1割の利用者の自己負担で賄われている。際限なく保険料が上がれば、負担できない人が出てくる可能性がある。介護を必要とする人が安心してサービスを受けられる環境を守るためにも、負担の在り方を含めた制度の見直しが急務だ。

 市町村ごとの保険料の差も少なくない。県内で最も高い7700円の三島町と、最も低い自治体とは1.6倍の開きがある。要介護者が多く、サービスの需要が大きいほど保険料が高くなる傾向だ。

 どこに住んでいても同様のサービスを受けられることが重要だ。しかしサービスを維持するため、自治体の規模や高齢化の状況で保険料に大きな差があるのは望ましくない。国は、地域間格差の改善に向けた対策を検討すべきだ。

 一定の所得があり、2割以上の負担を求められている利用者もいる。政府はこうした対象者を拡大し、保険料を抑えることを検討している。しかし最近の物価の高騰などを受け、今回は見送られた。

 支払い能力に応じた負担の仕組みは理解できる。国会で議論し、早期に結論を出す必要がある。

 保険料を抑制するには、介護費用を増やさないための取り組みが欠かせない。病気の予防、身体機能を保つための運動などで要介護者を減らしたり、重度化を防いだりして保険料の上昇を抑えている自治体もある。好事例を参考に市町村は介護サービスを利用することなく、健康に長生きできる人を増やす取り組みを強化すべきだ。

 サービスを提供する施設側もケアやリハビリに工夫を凝らし、利用者の重度化を抑えることが重要だ。各市町村は、業務の効率化を図っているか、適正なサービスを提供しているかなどの確認を徹底してもらいたい。

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