精神障害者、体験生かし 講師として精力的に活動

 精神障害者が自らの体験を生かし、職業として仲間の精神障害者を支援する「ピアスタッフ」の活動が、横浜でも広がり始めている。昨年11月に発足したYPS横浜ピアスタッフ協会は、大学のゼミや精神障害者家族会、福祉施設への講師派遣など精力的な活動を展開。精神障害者の雇用拡大と地位向上に向けた切り札的取り組みとして、関係者らの期待が高まっている。

 YPSは、日本ピアスタッフ協会の発足(2014年9月)に呼応し、市内の障害者施設職員の障害者らで結成した。「私たちは仲間(ピア)を何よりも大事に思います」などを掲げた8項目の憲章を守れば、入会要件も会費もないオープンな団体。110人が会員になっており、9月には「第1回横浜リカバリー・パレード」(実行委主催)に協力する予定だ。

 会員で、就労継続支援B型事業所「シャロームの家」(横浜市磯子区)のピアスタッフ堀合研二郎さんは「各区の精神障害者生活支援センターや福祉事業所などで確実に増えつつあるピアスタッフは、精神障害者の地位向上の切り札」と語る。

 YPSは今月3日、市健康福祉総合センター(同市中区)で普及促進作戦会議を開催。市内外の精神障害者施設のピアスタッフや支援者、研究者ら約180人が参加し、聖学院大教授の相川章子さん、NPO法人ミュー理事の関口明彦さん、多機能型事業所すぺぃろピアスタッフの佐々木理恵さんらパネリストと普及方法を議論した。

 会議では「一般の専門職が言っても響かないが、当事者が自分の体験を基に語るのは大きい」などと期待する声が相次いだ一方、課題を指摘する声も。佐々木さんは「専門職からも当事者からも傷つけられる」と、立場の微妙さを解説。相川さんも「雇用環境の問題から、つぶれて辞めてしまうピアスタッフも多い」と、研修の機会など職場の支援体制が必要とした。

 関口さんは「ピアスタッフは単なるピアではない」と述べ、支援の専門性を指摘。「(雇用した福祉施設には)ピアスタッフ加算を付けるべきだ」と、専門職としての地位確立と財政面で支える制度の構築を訴えた。

 YPSへの問い合わせは、事務局電話045(752)5958。

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