ベトナム元難民らが「恩返し」 熊本支援に80万円寄託

 熊本地震の被災地への救援金として、ベトナムの元難民らによる市民団体が、80万5千円を神奈川新聞厚生文化事業団に寄託した。東日本大震災でも、いち早く支援活動に乗り出した「かながわベトナム人ボランティアグループ」。助け合いの根底にある気持ちは、難民の定住を受け入れた日本に対する「恩返し」だ。

 メンバーは、1975年のベトナム戦争終結に伴い、国外に脱出した元難民や、合法出国計画(ODP)で呼び寄せられたその家族。70年代に機械工学を学ぶ留学生として来日し、母国・南ベトナム共和国の崩壊によって日本国籍を取得した会社員の日野肇さん(64)=綾瀬市=が、救援金を呼び掛けた。

 有志約150人が、1人千〜10万円を持ち寄り、国が大和市内に開設した難民定住促進センターの相談員だった志賀ツヤ子さん(69)が手伝った。寄託は20日付。

 グループは東日本大震災では発生直後に大型バス2台で福島市や宮城県石巻市に駆けつけ、ベトナム料理店「サイゴン」(横浜市泉区)で下ごしらえした郷土料理のフォーや揚げ春巻きを振る舞った。熊本地震後も炊き出しを検討したが、相次いだ余震から一部メンバーを除いて出発を見送り、寄付による支援を決めた。

 日野さんは「日本は帰る場所を失った私たちを受け入れてくれた。地震で家を失った人々を今度は私たちが支える番」と話す。ベトナム出身者はほぼ仏教徒で、「功徳を積む」という宗教観もあり、デイン・キムホアさん(47)=横浜市泉区=は「助け合いは自然な感情」、ファム・トゥイハンさん(50)=愛川町=も「国籍は関係ない」と被災者を気遣う。

 グループは、フィリピンの台風被害(2013年11月)やネパール大地震(15年4月)でも、被災地に救援金を送っている。

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