選挙演説で「人権侵害」 民団、救済申し立て

 人種差別団体「在日特権を許さない市民の会」(在特会)元会長で、今年7月の東京都知事選に立候補した桜井誠氏の選挙演説で職員らの人権が侵害されたとして在日本大韓民国民団(民団)は21日、東京法務局に救済の申し立てを行った。選挙活動におけるヘイトスピーチを巡って被害を訴える初のケース。

 申立書によると、桜井氏は選挙期間中の7月15日、東京都港区の民団中央本部前で選挙カーの上などから「この民団、ろくでなし集団」「さっさと日本から出て行け」などと演説。民団は、職員や在日コリアン全体に向けられたいわれなき差別的言動により名誉が毀損(きそん)されたとして救済を訴えている。

 具体的には再発防止のための勧告とともに、ヘイトスピーチ解消法の趣旨を踏まえ、選挙活動での差別的言動に対処するよう関係行政機関に促すことを求めている。

 民団中央本部の孫(ソン)成吉(ソンギル)生活局長は「『出ていけ』は存在を否定する言動で、われわれにとっては『死ね』と言われているに等しい」と話し、「選挙に名を借りた差別が野放しにされてよいはずがない。選挙は全国各地で行われており、あしき前例にさせないためにも申し立てに踏み切った」としている。

 桜井氏は昨年12月、朝鮮大学校(東京都小平市)前で「殺してやるから出てこい」などと脅迫的な言動を行ったとして、東京法務局から同様の行為を二度としないよう勧告されていた。

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