旧吉田茂邸再建、来春公開へ 大磯町、愛用の調度品も復元

 大磯ゆかりの故吉田茂首相が晩年まで生活し、2009年3月に原因不明の出火で焼失した大磯町国府本郷の邸宅が「旧吉田茂邸」として再建され、町が来年4月1日からの一般公開を目指している。建物工事は完了しており、宰相が愛用した調度品も復元して当時を再現する方針。11月にリニューアルする町郷土資料館とともに、大磯の別荘文化と近現代史を体感する拠点として再出発する。

 町によると、4年ほど前に始まった再建事業は、残されていた設計図や写真などを基に建物を新築。総額約5億4100万円を要し、神奈川県内外から寄せられた同邸再建基金の約3億円と国や県からの交付金を充てた。「5月に建物工事が完了し、今は外構と内部調度品を整備している」(中崎久雄町長)状況という。

 町は焼失した調度品も、できる限り多く復元したい考えだ。かつて日米首脳会談の場にもなった応接室「楓(かえで)の間」にあったとされるとう製品のソファセットをはじめ、愛用のダブルベッド、食堂のテーブルなどを修復して「吉田茂が生活していた時代の復元」を目指すとしている。

 一般公開後は、年間3万人の来場者を目指す方針。入館料などの詳細は、12月の同町議会に旧吉田邸を公共施設として位置づける条例案を提出し、可決後に準備を進める。維持管理経費(人件費を除く)は約1千万円を見込み、入館料収入と地下室を利用した研修室の使用料で補う。当面は町直営による運営を進めるが、将来的には民間活力導入も視野に入れる。

 開会中の同町議会9月定例会で、関威國議員(無所属)の一般質問に答えた。

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