交通利便性向上へタクシーが一役 川崎で実験 事前予約で低料金維持

 川崎市麻生区岡上西地区で9月から、市内初となるタクシーを使ったコミュニティー交通の運行実験が始まった。路線バスがなく、最寄り駅まで距離がある住宅街の交通利便性を向上させようと、約3カ月間実施して本格運行を検討する。利用の有無に応じて便数が調整できるデマンド(事前予約)方式を採用し、無駄な経費を削減しながら低料金を維持する仕組みとなっている。

 運行区域は、同区と東京都町田市にまたがる和光大学近くの住宅街から、小田急線鶴川駅周辺までの約2キロ。途中に6カ所の停留所があり、好きな場所から乗車できる。始発の停留所付近から同駅までは徒歩で20分以上かかるが、車なら10分ほどで到着するという。

 12日の実験開始からすでに2回利用している、9カ月の長男の母親(33)は「ベビーカーだと駅まで30分は必要。普通にタクシーを呼ぶと千円以上かかるが、これなら安くてありがたい。長く続けてほしい」と期待を寄せる。

 運賃は片道1人400円で、市高齢者特別乗車証明書や身体障害者手帳を提示すると100円引き。住宅街の停留所からの発車時間は平日の午前7時半から正午まで、駅近くの停留所からの発車時間は午前11時半から午後6時半までで、利用者は決められた運行時間から選び、前日までに予約する。同じ便の利用者は相乗りとなり、定員4人のユニバーサルデザイン(UD)タクシーを中心に地元事業者が運行する。

 主体となって進めてきたのは、地元住民らが2014年に設立した「岡上西地区コミュニティ交通導入協議会」。土屋隆寿会長(70)は「買い物に行くにも病院に行くにも、まずは駅に出ないといけない地域。予約制度やルートを考えながら、多くの人が使いやすい交通手段になれば」と模索している。

 期間は12月9日まで。終了後は実験に協力している市と事業者、協議会の3者で利用結果を見直し、本格運行に向けて検討する。市の担当者は「タクシーなら道幅が狭い住宅街でも通れる。今回うまくいけば、ほかの地域でも導入したいという声が上がるかもしれない」と話している。

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