270年ぶりの本堂大改修 日向薬師、風格再び 伊勢原

 270年ぶりとなる国重要文化財の日向薬師・宝城坊(神奈川県伊勢原市日向)本堂の大改修がほぼ終わり、22日、外観が初めて一般公開された。黒を基調とした全国の寺院では珍しいという江戸中期の姿がよみがえった。11月20日に完成を祝う法要が営まれる。

 幕末期から今回の改修まで、はりや柱は朱色に塗られていた。今回の改修で部材を分解したところ、1745年に行われた江戸中期の大改修時の色が隙間に残っていた。そこで、朱色の部分を当時と同じ黒やオレンジ系の弁柄(べんがら)色に塗り直した。

 工事中は国内最大規模のかやぶき屋根のかやのふき替えのため、本堂全体が仮設の屋根や足場で覆われていた。4月から7月にかけて撤去されると、黒を基調とした落ち着いた雰囲気の外観が姿を現した。

 一般公開では、内部も公開され、市職員が解説した。市内に住む鈴木登さん(81)は「素晴らしい。本当にきれいになった。年月を経て、さらに風格が出てくるのだろう」と話していた。これから境内を整地するなどし、11月20日午前10時から、法要を行う。

 老朽化や虫害を受けた「平成の大修理」は2010年度に開始。国の補助金など約8億7千万円かけ、柱を含む全ての部材を解体して組み立て直した。炭素測定などで年代を調べた一部の部材は、鎌倉期や室町期の木材がそのまま使われていることが科学的に実証され、木材全体の8割は再使用できたという。

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