近づく戦争の足跡伝える 新聞博物館で「昭和8年」写真展

 日本新聞博物館(横浜市中区)で開かれている写真展「こんな時代があった 報道写真『昭和8年』」(12月25日まで)で、神奈川新聞の前身「横浜貿易新報」が、展示に一役買っている。日本の国際連盟脱退、ヒトラーの台頭など世界に戦争の足音が近づいていた時代を、当時の紙面を使ったパネルで伝えている。

 展示されている写真は、古写真収集家の石黒敬章さん(75)=東京都杉並区=が、2014年に古書店から入手した通称「電通アルバム」のもの。戦前の日本を代表する通信社・日本電報通信社などの配信記録だ。

 当時の米大統領ルーズベルトや、独首相ヒトラーら、その後の戦争を思わせる写真とともに、東京駅に到着した宝塚少女歌劇団の様子や、テニス選手・佐藤次郎の活躍など、つかの間の平和を写したものもある。そうした大きな事件の写真と併せて展示された、横浜貿易新報の紙面パネルは10点。国際連盟の脱退表明を伝える記事の一方で、川島芳子をアイドル的に取り上げた家庭面があるなど、当時の様子を反映している。

 石黒さんは、「当時は景気もよく、戦争に向かう雰囲気と市民の生活にギャップがある時代だった」と話す。同博物館でトークショーも行う予定で、「政治家の顔をコラージュした写真など、展示作品を使いながら歴史などを話したい」と語る。

 トークショーは22日と12月3日、いずれも午後2時から。各回先着100人(要予約)。入館料は一般400円。問い合わせは、同博物館電話045(661)2040。

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