戦争遺跡、次代へ 川崎で価値見つめ直すシンポ

 戦争の記憶が薄れる中で地域に残る戦争遺跡の価値を見つめ直すシンポジウムが23日、川崎市中原区の同市平和館で開かれた。地域の歴史を掘り起こしてきた市民団体が報告し、若い世代が生活圏の中で戦争を想像することができる戦争遺産の意義を訴えた。

 23、24日に開かれた「川崎・横浜平和のための戦争展」(主催・同実行委員会)の中で行われ、明治大平和教育登戸研究所資料館(川崎市多摩区)の山田朗館長が基調報告。偽札や細菌の研究・開発などをしていた旧陸軍登戸研究所の資料館について「秘密戦争に焦点を当てた類のない資料館。大義名分の下で非人道的なことをやってしまう戦争の本質が分かる場だ」と説明。さらに「身近な戦争遺跡は若い人も自分との結びつきの中で想像できる場として重要だ」と強調した。

 パネル討論も行われ、登戸研究所保存の会の森田忠正さんは「行政と友好な関係を築き、見学者が増えた。平和を学ぶ場としてもっと知らせていきたい」。川崎中原の空襲・戦災を記録する会の對馬労さんは「子どもたちの想像力を喚起しながら平和の種まきをしていきたい」と話した。

 太平洋戦争末期に旧海軍の連合艦隊司令部が置かれた慶応大日吉キャンパス(横浜市港北区)を案内する日吉台地下壕(ごう)保存の会の茂呂秀宏さんは「歴史教育の変化もあるが、平和教育が届かない子どもが増えていることが心配だ」と懸念していた。

© 株式会社神奈川新聞社