SL復活の立役者・恒松さんの事故死悼む 山北

 山北町で蒸気機関車(SL)の復活事業を担った中心的存在の元国鉄機関士・恒松孝仁さんが、交通事故で亡くなったことが25日、分かった。61歳だった。約半世紀ぶりにSLが動いた記念すべき日から、わずか9日。突然の訃報に、関係者から悼む声が相次いだ。

 恒松さんの妻から連絡を受けた町企画政策課などによると、恒松さんは23日早朝、妻の実家がある九州方面に車で向かっていた途中、中国自動車道で事故に遭い亡くなったという。

 山北鉄道公園に展示されているD52蒸気機関車の整備を町から託された恒松さんは、再び動かすために圧縮空気を動力源とする手法を導入。昨年末から今春にかけ、一時町内に住み込んで作業に打ち込んだ。鉄道の日の14日に行われた復活祭では自ら運転士を務めて再始動に成功。笑顔で「絶対に動かすという思いで取り組んだ。感無量です」と語り、鉄道の町の再活性化に思いを巡らせていた。

 山北鉄道公園保存会の関亀夫会長(83)は突然の訃報に、「復活祭での恒松さんの安堵(あんど)した表情が忘れられない」。湯川裕司町長は「事業で最も重要で、最も大切な方を失った。本当に残念でならない」とコメントした。11月23日に開かれる産業まつりでの運転は中止するという。

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