「還暦」の音色届け 横須賀交響楽団が演奏会

 アマチュアオーケストラ「横須賀交響楽団」が創立60周年を迎え、30日によこすか芸術劇場(横須賀市本町)で定期演奏会を開く。戦後の基地の街で、音楽を通した文化の向上を願って産声を上げた同楽団。練習場所の確保や資金繰りなど、数々の苦労を乗り越えて迎えた“還暦”のハーモニーを響かせる。

 同楽団はアンサンブル仲間が集まり、1956年に10人ほどで「湘南交響楽団」として発足。同楽団の記念誌によると、当時は大きな音を出せる練習場所の確保は難しく、銀行や町工場の倉庫を転々とした。団員同士の意見の相違による解散の危機、経済的な困難も記録されている。

 現在の団員数は、市内を中心に中学生から80代まで約100人。創立当初を知るビオラ担当の和田亘さん(84)は「初めのころは人数が少なく、オーボエやバスーンの演奏者がいなかったので、本番にエキストラを呼んでいたこともあった。今は立派になった」と感慨深げに振り返る。

 50年ほど前には、戦後日本を代表する作曲家の故・團伊玖磨さんが同楽団に携わる。横須賀に住んでいた團さんは、皇太子時代の天皇陛下のご成婚を祝って作曲した「祝典行進曲」を同楽団のために、吹奏楽編成からオーケストラ用に直した楽譜を書き下ろすなど、地元への愛着は強かった。

 30日の演奏会では、節目の年の恒例として團さん作曲の2曲を演奏。このほか、ワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」などを加え、計4曲を披露する。

 上田滋団長(68)は「60周年は一つの通過点。次の70周年に向けて市民楽団として歩むのを続けたい」と話している。

 午後2時開演。入場料は指定席1500円、自由席は千円。問い合わせは、芸術劇場電話予約センター電話046(823)9999。

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