50歳貯金5万円。自腹の経費とノルマが生活を圧迫

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、正社員になったものの、なかなか貯蓄ができない50代の独身女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

正社員になったものの貯蓄ができず、老後が不安です

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、正社員になったものの、なかなか貯蓄ができない50代の独身女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください(相談は無料になります)。

https://sec.allabout.co.jp/post-form/form/22

相談者

みかりんさん(仮名)

女性/会社員/50歳

愛知県/賃貸住宅

家族構成

独身、一人暮らし

相談内容

12年前に離婚し現在独身です。貯金が出来ません。仕事は営業職でお客様への郵送費用(月5000~6000円)などは自腹です。自分のお金を持ち出すのに不満はありますが、年齢的に新しい仕事へ踏み出せないでいます。60歳までは働かざるを得ないと思いますが、ともあれ、老後が心配です。父母は施設に入り今のところ父の年金で費用は払えています。

家計収支データ

「みかりん」さんの家計収支データ

家計収支データ補足

(1)現在の仕事

職種はどうであれ正社員ならばと就職したが 実際は1年を通して基準の契約ノルマがあり、一度でも基準を達成できなければ解雇。基本給は20万円だが、そこから最近始めた社内預金1万円、その他、厚生年金や健康保険や、介護保険、組合費等が引かれて、手取りは13万~14万円。

(2)希望転職先(本人談)

「介護職員は経験もあり、もっともストレスなく働けると思いますが、過去に2度、足の怪我で入院しており体力的に難しいのかと思います。事務職希望ですが未経験で、なおかつこの年齢的で採用されるか不安です」

(3)保険料の内訳

・本人/終身保険(死亡300万円、60歳払込満了)=保険料8000円

・本人/医療保険(終身保障終身払い、入院8000円、女性疾病特約)=保険料4000円

(4)両親について

施設費用は父母でしめて23万円。今は父の年金で、2人の費用をギリギリだがまかなえている。父が亡くなった後も父の遺族年金と母の年金で母が同じ施設に暮らせるように、実家は荷物の整理ができ次第、売却の予定。処分して残ったお金は母に渡し、母が暮らしていけるようにする。

FP深野康彦からの3つのアドバイス

アドバイス1 まずは転職を、そして65歳まで働く

アドバイス2 死亡保障より今の生活

アドバイス3 実家は相続して老後の住まいに

アドバイス1 まずは転職を、そして65歳まで働く

いただいた内容を拝見する限り、まずは転職を検討すべきではないでしょうか。仕事にかかる経費が持ち出しとなったり、ノルマを達成できなければ解雇になるなど、少なくともご相談者である「みかりんさん」にとって、働きやすい職場環境とは言い難いと思います。希望されている「一般事務・正社員」に就くことは、確かに容易ではありません。新しいことに踏み出せないという気持ちも、理解できます。それでも現状を変えるには、根気よく継続的に探していくことしかないはずです。

転職では、介護職員の経験も活かす方向も考えてはどうでしょう。過去に足をケガされ、また無理をしてしまっては元も子もありませんが、そういう負担の少ない職場を探す価値はあるのでは。何より慣れた仕事ゆえ「ストレスなく働ける」というのが大きいと思います。

また、「60歳までは働かざるを得ない」と言われていますが、できれば65歳までは働きたいところです。もっとも効果的な老後対策のひとつが、長く働くということ。老後資金は、公的年金だけでは不足する生活費を補うものです。したがって、額は少なくとも長く収入を得ることはとても有効なのです。

アドバイス2 死亡保障より今の生活

家計については保険以外、見直すべき無駄は見当たりません。通信費はご両親の携帯代金も負担しているため、この金額は仕方がないでしょう。趣味娯楽費の主な内訳はスイミングとネイルとのことですが、生活にこういった支出もなければ、ストレスが溜まってしまいます。しかも、スイミングは健康維持にもつながるのですから、意味のある支出となっています。しいて言えば、数千単位ですが、今より安く楽しめる工夫ができるかどうかでしょう。また、雑費に美容院や化粧品がありますが、これも一部は仕事の必要経費と考えられます。転職をして、職種も変われば、このあたりの支出は少し抑えられるかもしれません。

さて、保険についてですが、はたして終身保険は必要でしょうか。独身であっても、お葬式代としてまとまった死亡保障が必要という考えもあります。しかし、みかりんさんの場合、まずは今の生活。現在の貯蓄額が5万円なのですから、これを増やすことが最優先のはずです。

また、老後資金づくりが目的だとしても、予定利率が低いこと、保険としてのコストが発生していることを考えれば、同額を定期預金で貯めた方が効率的です。したがって、現在加入の終身保険は「払済保険」にして、月8000円の保険料は貯蓄に回すべきです。

アドバイス3 実家は相続して老後の住まいに

老後について気になることがひとつ。「父親がなくなり、母親だけとなった場合、継続して施設に入れるよう、実家を売却してその費用に充てる」と言われていますが、それは最後の手段ではないでしょうか。

住宅の様子はわかりませんが、さほど手を入れずとも住むことができるのなら、みかりんさが相続して、代わりに住むことが望ましいと考えます。もちろん父親が亡くなった後、年金と金融資産等で母親が継続して施設に入り続けることができるという前提です。持ち家になれば固定資産税などの維持コストは発生しますが、家賃を払うよりは負担が小さいはず。何より、住むところが確保できているということは、老後生活においては安心感につながります。そのときは、ご実家から通勤が可能な範囲で仕事を探さなくてはなりませんが、それも含めて検討してみてはどうでしょう。

ともあれ、貯蓄がわずかしかありません。老後を見据えるというよりは、何であれ、少しずつでも貯めるペースを上げていくことが、今の家計管理のポイントです。合わせて、ストレスを感じずに、安定した収入が得られる職場への転職を目指すべきだと思います。

教えてくれたのは……深野 康彦さん

業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武

(文:あるじゃん 編集部)

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