朝鮮学校無償化を勧告 国連人権理「差別なく平等な扱いを」

【時代の正体取材班=石橋 学】日本の人権状況を審査する国連人権理事会の作業部会は16日、218項目からなる勧告を発表した。高校無償化制度の対象から唯一除外されている朝鮮学校に制度を適用するよう求める勧告が初めて盛り込まれた。  16日に採択された勧告は「すべての学校に無償化制度を適用せよ」「社会権規約委員会と人種差別撤廃委員会の勧告に従い、マイノリティーの子どもたちの教育権を差別なく確保せよ」「関連条約機構の勧告に従い、朝鮮学校への平等な扱いを確保せよ」などと求める。朝鮮学校の排除を差別と批判し、是正を求めた13、14年の国連社会権規約委員会、人種差別撤廃委員会の勧告を無視する日本政府への非難を含めた内容となっている。

 高校無償化制度は民主党政権下の10年に始まったが、朝鮮学校は適用が留保され、12年に発足した安倍晋三政権が審査を打ち切り不適用を決めた。当時の下村博文文科相は記者会見で「拉致問題に進展がない」ことなどを理由に上げていた。

 14日の日本審査会合ではポルトガル、パレスチナ、オーストリア、北朝鮮が制度適用や教育権確保に言及。これに対し日本政府は「法令の趣旨にのっとった判断。民族差別や教育権の侵害にはあたらない」と答弁していた。

 人権NGOが参加した10月の事前会合で、朝鮮学校が置かれた現状を各国に説明した在日本朝鮮人人権協会の朴金(パクキム)優綺(ウギ)さんは「すべての子どもの学びを支援する無償化法の趣旨に反し、政治的理由で朝鮮学校を排除しているのは国際社会の目からも明らか。これまでの勧告に従っていないことを踏まえた勧告を重く受け止め、速やかに制度を適用すべきだ」と話している。

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