マイコラスも続けるか NPBから復帰後、MLBで活躍した助っ人投手たち

復帰したメジャーで果たして活躍ができるか注目のマイコラス【写真:編集部】

昭和の時代には珍しかった助っ人投手の米復帰

 巨人で3年間、エース菅野智之とともに先発投手陣を引っ張ってきたマイルズ・マイコラスが、MLBセントルイス・カージナルスと2年契約を結んでMLBに復帰した。日米で実力差があると言われた昭和の時代には、NPBに移籍した投手のMLB復帰は極めて珍しかったが、NPBの投手の実力が一定の評価を得た近年は、こうしたケースが増えつつある。

 昭和の時代では、巨人で活躍したビル・ガリクソンがMLBに復帰している。

◯ビル・ガリクソン(実働 1979-1994 巨人1988-89)
NPB移籍前 241試合101勝86敗0S 防御率3.61
NPB時代(巨人)41試合21勝14敗0S 防御率3.29
MLB復帰後 150試合61勝50敗0S 防御率4.50

 巨人移籍前からメジャーでローテーション投手として活躍。1988年に鳴り物入りで来日し、2年でアストロズに復帰した。翌年、タイガースに移籍して20勝9敗で最多勝を獲得。日本でも話題になった。防御率は悪化したが先発として活躍した。

 打者では、阪神で1年だけプレーしたセシル・フィルダーがMLB復帰後に50本塁打、2冠王など大活躍したが、投手の事例は少なかった。

 近年、記憶に新しいのが広島で投げたコルビー・ルイスだ。

◯コルビー・ルイス(実働 2002-2016 広島2008-09)
NPB移籍前 72試合12勝15敗0S 防御率6.71
NPB時代(広島)55試合26勝17敗0S 防御率2.82
MLB復帰後 161試合61勝57敗0S 防御率4.27

 日本に来る前は1度だけ10勝を挙げたが低迷していた。広島時代は2年連続で最多奪三振。抜群の制球力が目立ったが、MLB復帰後はレンジャーズでダルビッシュ有などと先発の柱として投げた。日本での経験が役に立ったと発言している。

 復帰後、強豪ジャイアンツのローテーション投手になったのが、阪神、オリックスで投げたライアン・ボーグルソンだ。

阪神でプレーした2投手も米復帰後に活躍

◯ライアン・ボーグルソン(実働 2000-2016 阪神2007-08オリックス2009)
NPB移籍前 120試合10勝22敗0S 防御率5.86
NPB時代(神・オ)62試合11勝14敗0S 防御率4.17
MLB復帰後 169試合51勝53敗0S 防御率3.98

 日本に来る前は二線級の先発投手で、日本でも目立った活躍はできなかった。しかし復帰後、ジャイアンツで13勝、14勝を挙げるなど活躍。なお、ボーグルソンは日本の登録名。MLBではボーゲルソンと呼ばれた。

 救援投手では、阪神で投げたスコット・アッチソンがMLB復活後、活躍した。

◯スコット・アッチソン(実働 2004-2015 阪神2008-09)
NPB移籍前 53試合2勝3敗0S 防御率4.10
NPB時代(阪神)117試合12勝9敗0S 防御率2.77
MLB復帰後 245試合15勝8敗3S 防御率3.52

 この投手も来日前は二線級だったが、MLB復帰後はレッドソックス、インディアンスなどでセットアッパーとして活躍した。

 このほかにも2010年に広島で1年だけ投げたエリック・スタルツ、NPBとMLBを二往復したバディ・カーライルのように、NPBからMLBに復帰する例は近年、珍しくなくなった。

バーネットは日本での実績が認められてメジャーデビュー

 NPBでの実績が評価されてMLBデビューを果たしたのがトニー・バーネットだ。

トニー・バーネット(実働 2010- ヤクルト2010-15)
NPB移籍前 MLBでの登板実績なし
NPB時代(ヤクルト)260試合11勝19敗97S49H 防御率3.60
MLB復帰後 103試合9勝4敗2S19H 防御率3.75

 2015年のヤクルト優勝の守護神として活躍したバーネットはこの年のオフにレンジャーズと2年契約を結ぶ。2006年にダイヤモンドバックスのドラフト10巡目でプロ入りしてから4年間、挑戦して果たせなかったメジャー昇格をNPBでの実績で実現させた。レンジャーズと再契約し、来季残留が決まっている。

 NPBからMLBに移籍して活躍する選手に共通するのは、比較的若くして日本に来ていること。また、日本で制球力が向上したケースが多い。NPBからMLBに復帰する前例が多くなって、NPBでの実績から、MLBで通用するかどうかをある程度類推できるようになった。マイコラスへオファーしたカージナルスもそれほど不安視していないだろう。

マイルズ・マイコラス(実働2012-17巨人2015-17)
NPB移籍前 37試合4勝6敗0S1H 防御率5.32
NPB時代(巨人)62試合31勝13敗0S0H 防御率2.18
MLB復帰後 ?

 マイコラスはMLBでは救援で起用されることが多かった。先発投手としての能力は日本で開花したと言ってよい。もともと制球力の良い投手だったが、巨人ではそれに磨きがかかった。2017年は187奪三振で、奪三振王に輝いたが与四球はわずか23個だった。

 彼もまだ29歳と若い。カージナルスはエースだったウェインライトに衰えが見える。先発の一角として活躍する可能性は十分にあるだろう。

 今や、NPBで活躍する投手は、日本人、外国人の別なくMLBが注視している。獲得した外国人投手が活躍するのは、NPB球団にはありがたいことだが、そうなればMLBがオファーする可能性が出てくる。年俸では太刀打ちできない。痛し痒し。そういう時代が到来しているということだ。

(細野能功 / Yoshinori Hosono)

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