リーグ拡大、米マイナー参戦…巨人史上最強助っ人が語る、独自のNPB改革案

ウォーレン・クロマティ氏【写真:編集部】

強力助っ人の“不在”も嘆く「優秀な外国人選手が何人も必要」

 巨人史上最高の助っ人と呼ばれるレジェンド、ウォーレン・クロマティ氏は自身が活躍した1984年から90年までと現在のNPBを比較し、「レベルダウンしている」と警鐘を鳴らしている。同氏は、レベル低下を主張する上で2つの理由を挙げると同時に、日本球界の国際的な競争力を高めるために独自の改革案を語った。 

 昨年7月に宮城県石巻市で行われたリトルリーグ小学4・5年生の全国大会「MLBカップ」にゲストとして参加するために来日したクロマティ氏。16チーム、250人の野球選手に直接指導を行い、東日本大震災の被災地復興にも2年連続で貢献した。 

 そんなクロマティ氏は今でも日本球界に熱い視線を注いでおり、自身の現役時代と比較し、「私はテレビなどで日本のプロフェッショナルの野球のレベルを見ていてがっかりしています。レベルダウンしています。本当です。野球に対する関心、ファンの熱意は健在です。しかし、競技面でのレベルは少し落ちてますね」と語った。 

 本当にNPBのレベルは下がっているのだろうか。クロマティ氏は、警鐘を鳴らす理由を2つ挙げている。まずは一流の外国人助っ人の不在だという。 

「私が巨人に来た時もそうでした。私たち外国人選手が日本の野球のレベルを押し上げることに貢献できたと自負しています。私、ブーマー、バース、ブライアント、デストラーデ。我々全員、日本の野球を向上させることに貢献できたと思います。最高のインパクトを残すことができた。ただ、今はそういう外国人選手を見つけることが難しい。でも、今のリーグのレベルを上げるには、優秀な外国人選手を1人連れてくればいいということでもないんです。1人だけでは全体は変えられない。何人も必要なんです」 

 かつて、NPBでは誰もが知る助っ人のスーパースターが輝きを放っていたと、クロマティ氏は分析する。阪急(現オリックス)で1984年シーズンにMVPに輝いたブーマー・ウェルズ、阪神で85年にMVP、2年連続3冠王に輝いたランディ・バース、近鉄で89年にMVPに輝いたラルフ・ブライアント、そして、西武で3年連続本塁打王に輝いたオレステス・デストラーデ。自身も89年にMVPに選出されているクロマティ氏は、リーグのレベルを上げるような猛者の長きに渡る不在を指摘している。 

“2軍選抜”が米マイナーに参戦するメリットとは

 もう1つの理由についても、クロマティ氏は独自の考察を示した。 

「今の日本の野球のレベルはまた下がってしまった。理由はワンパターンにもあります。パシフィック・リーグとセントラル・リーグには6チームしかありません。私が来た時と変わらない。MLBのようなエクスパンションがない。時々、交流戦で別のリーグと戦いますが、同じチームとばかり対戦しています。同じ相手に同じプレー……」 

 MLBはエクスパンションと呼ばれるリーグ拡大を経て、現在はア・リーグ15球団、ナ・リーグ15球団の全30球団でワールドシリーズ王者の座を争っている。コミッショナーのロブ・マンフレッド氏はチーム数を増やす方針を示し、アメリカ国内のみならず、野球人気のグローバル化を目指している。 

 日本は6球団による2リーグ制で揺るぎない伝統を築いているが、反面、レベルダウンを引き起こしているとクロマティ氏は独自の見解を主張。警鐘を鳴らす一方で、改革案を示している。 

「自分よりも優れたチームと戦うことが成長には必要です。日本のファームチームはアメリカでマイナーリーグのチームを設立し、そこで1年間戦うことも成長するためにはいいかもしれません。NPBがこのプランを気に入るかわからないが、これも選手が個々に成長するための施策になるでしょう。以前よりもメジャーとの差が開いてしまった今、日本のベースボールの国際的な競争力も高まると思います」 

 日本のファームで修練を積んでいるタレントを集結させ、米マイナーリーグに“日本代表”として送り込む。そして、メジャーのスーパースター候補相手に1シーズン、厳しい戦いを続ける。この武者修行は日本球界の底上げにつながると、クロマティ氏は提言している。 

「これはあくまで私案だが、全ての球団から選手を集めるマイナーリーグをアメリカに作る。ルーキーリーグ、1A、2Aのディビジョンに1チームずつ作るのはどうでしょう。何よりも選手はタフになります。メジャーのスタイルも導入できる。英語も覚える。成長できます。メジャーの球団にとっても、日本の優秀な選手を見つける機会になるかもしれません」 

 日本球界の発展を心から願うクロマティ氏。メジャーと日本で活躍した経験から生み出された斬新な改革案には、一考の余地があるかもしれない。

(Full-Count編集部)

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