西東京のドクターK、「顔に自信」右サイド、日本人最速左腕…鷹育成は宝の山?

ソフトバンク・長谷川宙輝【写真:福谷佑介】

千賀、甲斐、石川…育成から好選手を輩出するソフトバンク

 福岡ソフトバンクの千賀滉大投手、甲斐拓也捕手、石川柊太投手。ご存知の通り、彼らはいずれも育成契約というスタートから、不断の努力によって現在の地位まで駆け上がって来た。

 そして今春のキャンプでも、福岡ソフトバンクの育成選手である長谷川宙輝投手と野澤佑斗投手が、第3クールからA組昇格を果たしている。そこでここでは、上記の2投手をはじめとした福岡ソフトバンクの「育成の星」候補を紹介していきたい。

〇長谷川宙輝投手
背番号「134」の長谷川宙は、2016年の育成ドラフト2巡目で入団。今季プロ2年目を迎える19歳左腕だ。聖徳学園高校時代に「西東京のドクターK」と称された高い奪三振能力が魅力である。

 昨季の3軍成績は19試合4勝4敗1セーブ、防御率4.24だったが、チーム内でぶっちぎりトップの80三振を奪い、奪三振率は9.69を誇った。ファームでも3試合に登板して3回6奪三振、防御率0.00をマークしている。 

 秋季キャンプでは「工藤塾」に入門して直々に指導を受けるなど、1軍の首脳陣からも注目される長谷川宙。前述の通り春季キャンプはB組スタートだったが、A組の打撃投手を務めてアピールに成功し、2月11日の第3クールからA組合流も果たしている。最速149キロの直球と、落差の大きいスライダーが武器。今現在、最も支配下登録に近い育成左腕と言ってもいいだろう。 

〇野澤佑斗投手
背番号「129」の野澤は、今季プロ3年目の20歳。2015年育成ドラフト1巡目で指名され、つくば秀英高校から福岡ソフトバンクに入団した。右のサイドハンドであり、昨季はファームで42試合2勝1敗1セーブ、防御率1.02の好成績を残している。

「 (自身の直球は)汚い。僕の顔はきれいですけど」とおどける若鷹。今春のキャンプでは、長谷川宙と同じく第3クールからA組に昇格した。シーズンでも、1軍の舞台でその姿が見られるか。

千賀も称賛する最速158キロ左腕

〇川原弘之投手
川原は、プロ9年目の26歳。2009年ドラフトで、支配下選手として2位という上位指名を受けている。2012年のウエスタン・リーグでは、当時の日本人左腕最速の158キロ(参考記録)を叩き出し、速球派左腕としての活躍が期待された。

 しかし度重なるケガに苦しめられ、左肩の手術とトミー・ジョン手術を受けた2015年オフ、長期間に渡って実戦復帰が見込めないこともあって支配下契約を解除される。育成契約を結び、背番号「122」として、新たなスタートを切ることになった。

 そして昨季。6月10日の楽天との練習試合で2年8か月ぶりの復帰登板を果たすと、走者を出しながらも1回を無安打無失点に抑える。その後も3軍で登板を重ね、10試合2勝2敗、防御率3.21という成績を残した。

 今オフ、チームメイトの千賀や石川らの自主トレ合宿に参加。そこで千賀から「一番すごい」と称賛された。評論家時代の工藤監督には「モノが違う」と言わしめ、さらに秋山幸二氏、王貞治氏も注目する未完の大器。1軍のマウンドへ返り咲く日が待ち遠しい。

 このように、福岡ソフトバンクの育成選手には次世代のスター候補が数多く在籍している。ただ、「お前たちはプロじゃない」という厳しい声もかけられるのが育成選手というもの。先達のシンデレラストーリーはドラマチックだが、いかに実力社会といえども、育成選手と支配下選手のスタート地点には差があり、与えられるチャンスは決して平等ではない。

 ただ、育成選手が成り上がる上で「実績」のある福岡ソフトバンクの環境は、比較的頼もしいものであるとも言えるだろう。リーグ屈指の育成環境のもとで、可能性あふれる選手とコーチ陣が、二人三脚でどのような成長曲線を描いていくか、注目していきたい。

(Full-Count編集部)

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