大学では「3番・投手」 女子野球W杯目指す19歳“二刀流”が秘める可能性

投打で実力をアピールする山田優理【写真:石川加奈子】

尚美学園大2年の山田、176センチ&76キロの大型選手

 女子野球界に抜群の潜在能力を秘めた大型左腕がいる。山田優理投手(尚美学園大2年)。身長176センチ、体重76キロの恵まれた体格から最速122キロの速球を投げ、打っても時速127キロというスイングスピードで柵越えを放つ。

 13~15日に高知県安芸市で行われた侍ジャパン女子代表の強化合宿でも、その存在感は光っていた。3日間連続で行われた紅白戦で志願の3連投。初日は2死二塁から連続四球を与えた後に2点適時打を許すなど、2回を投げて5安打と3四球で3点を失った。だが、2日目、3日目はそれぞれ1回を無失点で切り抜けた。

 持ち球は直球とカーブだけ。「カーブが決まれば、簡単に組み立てられるのですが、カーブが入らないと苦しくなってしまうんです。右バッターへの変化球はずっと課題です」と山田は自己分析する。最終日の紅白戦では、右打者からすべてカーブで三振を奪った。「あのカーブは良かったですね。でも次のバッターへの三塁打はやっぱりカウントを悪くしてからなので。もっとテンポ良く投げたいです」と反省も忘れなかった。

 昨季は大学のチーム事情もあって一塁手として出場しており、投手としては1年間ブランクがあった。制球力やフィールディングなど課題は多く、まだまだ荒削り。橘田恵監督は期待が大きいからこそ「何が足りないのか自覚を持って取り組んでほしい。活躍できるものは持っているのだから」と、さらなる奮起を促す。

 木戸克彦ヘッドコーチ(阪神球団本部部長)も山田に一目置いている。「学ばなきゃいけないことがたくさんあるけれど、里(綾実投手)の後釜になれるくらいの素材ではある。あの体で左、球も重いしね」と将来性に期待する。

代表を目指すきっかけは、元日本代表・西との出会い

 昨年末に行われたトライアウトでは、球速(122キロ)、スイングスピード(127キロ)ともトップの数値を叩き出し、初選出された。実は投げるだけはなく、打ってもすごい。昨年11月のジャパンカップ、埼玉栄戦ではわかさスタジアム京都の右中間に柵越えを放って周囲を驚かせた。大学の試合では、山田が登板時にはDHを使わず「3番・投手」として出場している二刀流選手だ。

 小学4年の時に神奈川県伊勢原市の高部屋少年野球部で野球を始め、伊勢原山王中では野球部に所属していた。卒業後は自宅近くに女子野球部のある学校がなかったため、厚木商高に進学して、ソフトボール部に入部。打力が評価されて1年からインターハイに出場した。強肩を買われ、異例の左利きの捕手だった。「野球とはスピード感が全然違って。やっぱり野球の方が面白い」と半年で退部。日本代表の「4番・捕手」として長年活躍した西朝美が監督を務める女子硬式クラブチームの「AFB-TTR」に入った。

 この時の西との出会いが、代表を目指すきっかけになった。「実は西さんのことは入ってから知りました。つきっきりで教えてくれて、高校時代に球が速くなりました。『日本代表にも絶対行けるから頑張れ』と励ましてくれて。恩返しをしたいです。周りがトッププレーヤーばかりの中でマウンドに立って投げたい」と最終メンバー入りへの思いを語る。

 メンバーが35人から20人に絞られる今回のサバイバル合宿を終えた山田は「今自分ができることはやりました」とうなずいた。結果はどうであれ、野球選手して課題を克服してステップアップを目指すことに変わりはない。現在はフォークとチェンジアップに挑戦中だ。「今回代表に選ばれたらいいなと思いますが、無理でも、大学の方でバッティングでもピッチングでもいい成績を残したいです」。19歳の挑戦は始まったばかりだ。

(Full-Count編集部)

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