MICE事業巡り市議会 ジャパネットのアリーナ 「機能重複」か「相乗効果」か 近隣の類似構想に波紋

 長崎市がJR長崎駅西側に計画しているMICE(コンベンション)機能を備えた複合施設整備を巡り、ジャパネットホールディングス(佐世保市)などによる近隣地でのアリーナ整備構想が市議会に波紋を広げている。議会内には機能重複への懸念から「市はいったん立ち止まるべき」との声がくすぶるが、市は「相乗効果を出す」と強調し施設整備予算を6月7日開会予定の定例市議会に提案する方針。市の目玉事業を巡る市と議会の議論が熱を帯びそうだ。
 複合施設は約2・4ヘクタールの用地に、市が約147億円を投じて3千人規模の学会や大会に対応できるコンベンションホールやイベント・展示ホールなどを整備。九電工や地場建設業者などの企業グループが約200室の高級ホテルなどを整備し、MICE施設と併せて運営する計画。開業目標は2021年11月だ。
 一方、ジャパネットなどは、長崎駅にほど近い三菱重工業の幸町工場跡地約7ヘクタールの土地で、23年をめどにサッカーJ1、V・ファーレン長崎の専用スタジアムや300室のホテルなどに加え、5千席のアリーナ整備も検討している。
 MICE施設を巡り市議会にはもともと、費用対効果の面に加え、佐世保市が誘致を目指すカジノを含めた統合型リゾート施設(IR)のMICE機能との競合への懸念から慎重論があった。ジャパネットが4月26日にアリーナ構想も含めた幸町工場の跡地計画を発表するとさらに強まった。
 ジャパネット側はアリーナについて「造るかどうか分からないが、造っても基本的にスポーツに特化する。MICE施設とのすみ分けも必要」とし、田上富久市長も「相乗効果を出すためジャパネットと綿密に協議し、議会とも情報共有したい」との姿勢だ。
 それでもジャパネットの詳細計画が分からないだけに警戒する市議は多い。ある市議は「機能がかぶればジャパネットにも市にも良くない。影響の有無が本当にはっきりするまで予算審議はできない」と指摘。別の市議も「市はいったん立ち止まるべきだ」と話す。
 市は2月に整備予算を提案予定だったが、企業グループの一部入れ替えに伴い見送った。今後も予算審議が滞れば、開業の行方は不透明になる。推進派の市議は「万が一、MICE事業が白紙になれば市は信用を失い、他の民間投資が鈍化しかねない。MICE用地もどうなるのか」と危機感を示す。

長崎市が計画しているMICE機能を備えた複合施設のイメージ(上)とジャパネットなどが計画している幸町工場跡地の開発イメージ

© 株式会社長崎新聞社