故障、不振に苦しむパ・リーグ中継ぎ陣 昨季の活躍から状況は一変

ソフトバンクのデニス・サファテ【写真提供:福岡ソフトバンクホークス】

昨季はソフトバンクのサファテがシーズン最多セーブでMVPに

 昨季のパ・リーグMVPは、シーズン最多セーブの日本記録を塗り替えた福岡ソフトバンクのサファテ投手である。パ・リーグでは1981年の江夏豊氏(日本ハム)以来となる救援投手のMVP獲得。福岡ソフトバンクの圧倒的な強さを支えた「勝利の方程式」の要だったこともあり、中継ぎ投手の重要性を改めて知らしめる受賞だったことは記憶に新しい。

 しかし今季、そんなキング・オブ・クローザーが早々に戦線を離脱した。右股関節の張りで4月18日に登録を抹消され、一時帰国することになったためだ。代役としては、ルーキーイヤーから4年連続50試合登板の鉄腕・森投手が指名され、奮闘を続けている。

 ただサファテに限らず、昨季フル回転してチームの勝利を導いてきたパ・リーグの救援投手は、今季アクシデントや不振に見舞われて苦しんでいるケースが多いようだ。

 福岡ソフトバンクの岩嵜投手は、昨季球団新記録、パ・リーグ1位となる72試合に登板。40ホールド、防御率1.99で最優秀中継ぎに輝いた。しかし、今季は4月9日に登録抹消され、12日に右肘鏡視下滑膜切除術・関節形成術を受け復帰まで3か月を要する見込み。ホークスは「勝利の方程式」再構築を余儀なくされることとなった。

 北海道日本ハムの鍵谷投手も、故障でチームから離れている。昨季はチーム最多の60試合に登板し、防御率2.53という安定感で後ろを支えた道産子右腕。増井投手がオリックスに移籍し、救援陣の柱としてさらなる期待がかかった今季だったが、オープン戦期間中の3月16日、右尺側手根屈筋(前腕内側)の筋挫傷と診断を受けた。すでにファームでは実戦に復帰している。

 そして、昨季は65試合に登板して4年連続の65試合登板を達成し、開幕から36試合連続自責点0と、驚異的な鉄腕で魅せた楽天の福山投手も、今季苦しんでいる中継ぎの1人だ。横浜から仙台に移り、戦力外通告を受けた選手とは思えない大躍進を遂げたが、今季はここまで15試合に登板して防御率7.47。16日には1軍登録を抹消されている。

 また、楽天ブルペンにおいては、守護神の松井投手や左キラーとして存在感を放った高梨投手も、昨年の活躍から考えると物足りない成績。大不振から持ち直してきたチームをさらに活気づけるために、彼らの完全復活が待たれる。

オリックスのブルペン陣は昨季と大きく変わる

 昨季、オリックスブルペンを支えた黒木投手と近藤投手の2人も、今季は苦しいマウンドが続く。黒木はここまでリーグトップの19試合に登板しているが、防御率は4.24。近藤投手も4月20日の楽天戦で押し出しによる失点を許すと、約1年ぶりの2軍降格を言い渡された。5月から昇格しているが、やはりまだ安定感を欠いている。

 今季は北海道日本ハムから加入した増井投手や、2年目の山本投手、中継ぎに回った吉田一投手、頭角を現してきた澤田投手と、ブルペン陣の陣容がガラッと変わっているオリックス。ここに昨季チームを支えた両輪が加われば、リーグ屈指の厚みを誇るブルペンになることは間違いない。浮上を目指す猛牛軍団において、若い2人にかかる期待は大きい。

 今回挙げた投手たちは、いずれも昨季パ・リーグを席巻したリリーバーたちだ。1点も与えられない場面でマウンドに上がる彼らが、その腕で背負うものの重さは計り知れない。なにより人間の肩肘には限界というものがあり、想像を絶する激務をこなして短いプロ生活を燃やし尽くした中継ぎ投手も数多い。故障や不振でそれぞれの壁に直面する時期は多かれ少なかれ、どの投手にもあるものだろう。

 それでも、そんな苛烈な役割にこそやりがいを見出してきた彼らが、本来持っている力は我々の期待を裏切らないもののはず。その名前だけで相手の戦意を殺ぐ岩嵜、サファテ、半袖姿で軽やかにアウトを積み重ねる福山、地元の大歓声を背に投げる鍵谷。これからもたった1人のマウンドで、印象的なシーンを呼び込む彼らの復活を待っている。

(盆子原浩二 / Koji Bonkobara)

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