またかすむ視界

 ひと頃は「全くの白紙」とまで言われたのを思い出す。9年前、政権が民主党に代わったとき、ダム建設などと並び、新幹線整備もまた「大型事業は一刀両断」のやり玉に挙げられた▲それから3年足らず、九州新幹線長崎ルートの諫早-長崎間が起工したのは驚きだった。計画決定から実に39年、視界がかすみ、開けて、またかすみ-を繰り返してきた長崎ルートの迷走劇に「ようやく幕」と小欄に書いたことがある▲その先がしかし、また長いこと。走行させるはずだったフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の開発が滞り、またも視界がかすんだ。新幹線と在来線特急を乗り継ぐ「リレー方式」で2022年度、暫定開業すると決まり、全線開業までの文字通り“つなぎ”にするというのだが▲つないだ後は、全線フル規格か、ミニ新幹線か。整備方式を近くまとめる予定だった与党の検討委は、決定を先送りした。佐賀県が費用負担増に難色を示しているから、と▲フルであれ、ミニであれ、佐賀県側が受け入れる様子は今のところうかがえない。FGTを実用化へと導けなかった国が、ある程度の費用を負うのが道理ではないか▲リレーのバトンは先々、どこへ渡るのだろう。視界が早く開けますよう-と、いったい何度、同じ願いをしてきたことか。(徹)

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