テン選手刺殺防げた 地元警察が大失策

By 太田清

 

20日、アスタナの川沿いにささげられたテン選手を追悼する花(タス=共同)

 2014年ソチ冬季五輪フィギュアスケート男子の銅メダリスト、デニス・テン選手(25)がカザフスタンで刺殺された事件で、同国警察は殺人容疑で2人の男を拘束。事件は世界に衝撃を与え、ナザルバエフ大統領は検察当局と内務省に徹底的な捜査を指示。日本を含む多くのスケート選手が哀悼の意を伝えたが、捜査の過程で衝撃的な事実が明らかになった。テン選手を刺した男は事件の8日前にテン選手の事件と同様、車のミラーを盗もうとして逮捕されていたというのだ。カザフスタン紙ブレーミャ(電子版)などが23日伝えた。 

 男はアルマン・クダイベルゲノフ容疑者(23)で、警察はなぜか「逃走しない」との誓約書にサインさせた後、前科があったにもかかわらず同容疑者を釈放。同容疑者は19日、別の容疑者とともに最大都市アルマトイの路上でテン選手所有の日本の高級車ブランド「レクサス」の車からミラーを盗もうとしたところを、テン選手に見つかり口論となり、テン選手の右太ももなどをナイフで刺し出血死させた。 

 最初の盗難未遂事件の被害者シャムシエフさんはクダイベルゲノフ容疑者の釈放に驚いたが、警察当局はこの事実を口外しないようシャムシエフさんに要請したという。シャムシエフさんは釈放の背景として、警察当局とクダイベルゲノフ容疑者との間に何らかの癒着があった可能性について指摘。カザフスタンでは警察の対応の不手際に非難が集まっている。 

 最初の盗難未遂は11日、カザフスタン首都アスタナで起きた。自分の車のミラーを盗もうとしたクダイベルゲノフ容疑者を見つけたシャムシエフさんは警察に通報。駆け付けた警察官が同容疑者を逮捕した。事件の審理は早ければ20日にも始まる予定だった。クダイベルゲノフ容疑者は逃走しないとの誓約を破り逃走、アルマトイでテン選手との事件を起こした。 (共同通信=太田清)

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