守備の名手の父は「違うレベル」大学野球デビューした奈良原Jr.が目指すもの

東北福祉大・奈良原稔也【写真:高橋昌江】

東北福祉大・奈良原稔也内野手が秋季リーグで初出場

 仙台六大学野球の秋季リーグ戦が2日、開幕した。今年の全日本大学選手権で14年ぶりの日本一に輝いた東北福祉大は、開幕節で東北大と対戦し、2試合連続のコールド勝ち。勝ち点1を奪取し、2季連続70度目のリーグ制覇へ好スタートを切った。3日の2戦目には、中日の奈良原浩・1軍内野守備走塁コーチの長男・稔也内野手(3年・堀越)が代走から出場し、ショートの守備に就いた。

 大学野球デビューは5回裏の攻撃で回ってきた。2死二、三塁で死球を受けた3番・元山飛優(2年・佐久長聖)の代走としてグラウンドに飛び出した奈良原。4番・清水聖也(3年・智弁学園)が一ゴロに倒れ、進塁することはできなかったが、「(出場が)初めてだったので緊張しました」と初々しく振り返った。

 そのままショートの守備に就くと、6回の1死一塁で盗塁を仕掛けてきた東北大の代走・宮下和輝(2年・中央中等)を途中出場の捕手・笹谷拓海(3年・花咲徳栄)の送球でタッチアウト。7回コールドだったこともあり、守備機会はこの1度だけだったが「あれでちょっと楽になった」と話した。

 奈良原の父・浩氏は西武、日本ハム、中日で活躍した元プロ野球選手。計16年の現役時は守備の名手として鳴らした。現役引退後は中日、西武でコーチを務め、今季も中日の1軍内野守備走塁コーチ。侍ジャパンではヘッドコーチも経験した。そんな父の現役時代はあまり記憶にないという。父がプロ野球選手であることを実感させたのは周囲の声だった。

「たまに『お父さん、偉大だったんだよ』みたいなことは言われます、周りから。『お前の親父すげぇな』とか。ただ、1つだけ覚えています。中日と日ハムの日本シリーズの時に球場に観に行ったこと。それだけですね。ナゴヤドームです」

 幼い頃のかすかな記憶。はっきりと父のプレーを見たのは、「ちょっと調べて」と、昨年YouTubeで検索をかけて出てきた映像だった。「さすがだなと思いました。あれは参考にできないです。また違うレベルなので」と笑う。

監督は父のチームメイト「足はうちの中でもトップレベル」

 野球を始めたのは小学2年の時。「お母さんに聞いた感じだと、小学1年の時に『野球をやりたい』と言ったようです。最初はサッカーをやっていて、小2から野球をやって。血が騒いだ? 多分、騒いだと思います(笑)」。堀越高から「全国でも優勝を狙えるチームでやりたい」と東北福祉大に進学。実際、チームは今年の大学選手権で14年ぶりの頂点に立ったが、奈良原はベンチ入りできず、「同じ舞台に立ちたい」と気持ちを奮い立たせた。

 夏場はより一層、腕を磨いた。練習で手本とし、アドバイスを受けてきたのは、二塁を守る中野拓夢(4年・日大山形)。「中野さんは球際の強さがあり、捕ってから早いし正確。何を意識しているのかを聞いて、自分の中で取り入れました」。捕球する前に送球を考えてしまうクセを指摘され、それを改善するなどし、この秋、初めてのベンチ入りを果たして出場も叶えた。父・浩氏と西武でチームメイトだった大塚光二監督は「(奈良原の良さは)守備と足ですよね。足はめちゃくちゃ速いですよ。うちの中でもトップレベルに入ると思う」と評価する。

「チームの勝利に貢献できるように、1個1個丁寧にやっていきたいと思います」と今後に向けて意気込んだ奈良原。この日は打順が回ってこなかったため、「ヒットを打てるように練習していきたい」。次の目標は、リーグ初安打だ。(高橋昌江 / Masae Takahashi)

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