ラジコンで「やり」回収 佐世保高専自動車部 陸上運営サポート 技術力生かし地域に貢献

 陸上のやりなげ競技で、投てきされた「やり」を人間の代わりに回収するラジコンカー。危険を感じるほどの猛暑の中、熱中症対策や省人化に効果を上げ、評判を呼んでいる。手掛けたのは佐世保工業高等専門学校(佐世保高専)の自動車部(約20人)。技術力を生かして地域に貢献しようと、部員らは日々技術を追求している。

 やり投げでは、5~6人の大会補助員がやりを回収するため、往復約120メートルを走ってスタート地点に戻していた。しかし陸上競技場の走路は、真夏になるとクラウチングスタートの際に手をつけることができないほど熱くなる。また毎年のように熱中症にかかる選手やスタッフがいた。

 「高専らしい方法で、何かできることはないか」。電気電子工学科3年のルーサー・オースティン・央人さん(17)、矢野竜之介さん(17)、機械工学科3年の藤井冬磨さん(17)らは、そんな思いで製作を始めた。

 コストを抑えるため、幼児が乗って遊ぶ市販のラジコンカーを活用。ボディー以外は全て作り替え、2016年度の佐世保市民体育祭で初めて披露した。

 今年に入り、高専体育大会のやり投げ競技に役立てるため改良に当たった。約2カ月かけ、部品が発熱する問題や、バッテリーの容量不足といった弱点を克服した。

 「無理のない設計で、信頼性を重視した」と振り返る3人は、▽フィールドの芝生で滑らないようタイヤに滑り止めを装着▽雨天時を考慮し配線カバーを設置-など工夫。安定した走りを保つ車に仕上げた。やりを傷めないよう、やりを立てる水道管のふちを削り、底にクッションを入れる配慮も施した。

 この夏開かれた九州大会と全国大会では、トラブルなく活躍。補助員はラジコンカーにやりを差し込む1人で済むようになった。

 3人は「学びを実践し、体感できてうれしい」と笑顔を見せる。将来的には自動走行させ、危険時には自動停止するよう改良を重ねるという。さらに、スポーツ競技に限らずあらゆる分野の要望に応えたいとしている。技術者の卵たちの挑戦は続く。

(右から)顧問の森川浩次准教授、矢野さん、藤井さん、央人さん=佐世保市沖新町、佐世保高専
高専体育大会で活躍したラジコンカー=熊本市、えがお健康スタジアム(佐世保高専提供)

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