JFEスチール、AIで作業者の安全支援 危険検知でライン停止、全製鉄所に導入へ

 JFEスチールは11日、人工知能(AI)による画像認識技術を活用し製鉄所で働く作業者の安全確保を支援するシステムを開発したと発表した。製造現場の立ち入り禁止エリアに作業者が進入するとAIが検知して警報を発し、生産ラインを自動で緊急停止させる。すでに知多製造所(愛知県半田市)に導入し効果を確認した。2019年以降に他の全ての製鉄所にも展開し安全対策の充実を図る。

 最新AIによる画像認識技術を持つNEC、NECソリューションイノベータの2社と共同開発した。安全確保を目的にAI画像認識技術を活用するのは国内鉄鋼業で初の取り組みになる。

 JFEの製鉄所では作業者の世代交代が進み、経験の浅い作業者を中心に現場の安全管理の強化が課題になっていた。最新AIによる新システムの導入で、製鉄所の労働災害の中でも発生頻度の高い挟まれ・巻き込まれなどの事故の未然防止につなげたい考えだ。

 知多では10月末に中径シームレス管工場に導入した。他の国内4製鉄所でも優先度の高い工場へ順次導入する。工場により異なるが導入費は数百万円。カメラの設置や設備を自動停止させる改造が必要になる。

 一般にAIによる画像認識技術で人の安全を確保する事例はこれまでもあったが、製鉄所で実用化するのは難しかった。製鉄所の工場内は場所により照明条件が異なり装置の配置も多種多様。作業者もさまざまな姿勢をとるため、人物検知自体が困難だった。

 この課題に対しJFEなど3社はAIが自ら学習するディープラーニング(深層学習)の手法を活用し、さまざまな作業を行う作業者の大量の画像を読み込ませ、実用レベルの人物検知を実現。立ち入り禁止エリアが条件により変更される特殊な工場内でも正確な認識を可能にした。開発は今年1月から9カ月間、数千万円をかけて行った。

© 株式会社鉄鋼新聞社