松坂の悲劇、サイン転売、選手への暴言…いま問われているファン側のモラル

中日・松坂大輔【写真:荒川祐史】

松坂はファンに腕を引かれて右肩に違和感、最近続発するファンに関する問題

 衝撃のニュースが飛び込んできた。11日のこと。中日の松坂大輔投手が右肩の違和感を訴えてキャッチボールを回避した。その事実以上に衝撃だったのは、その原因となったのが、数日前にファンに右手を引かれた際に生じたものだということ。中日球団は、今後しばらく、松坂がノースローで調整すると発表した。

 あってはならないことが起きた。身体が資本のプロ野球選手、アスリートが、一部のファンの手によって傷を負わされた。今後はファンサービスの在り方や、選手とファンの距離感が問題となってくるはずだ。

 こういったことが起こるリスクは常に存在していた。ファンが選手の身体に触れたがったり、握手やハイタッチを求めることは、キャンプなどでは日常の光景だ。引っ張られたら……ということを少なからず思っている選手もいるが、それでも選手たちはファンサービスを行ってきた。応援してくれることへの感謝を返す場として、そして、選手が怪我を負うようなことはファンはしないだろうと誰もが信じていたはず。それが、今回の一件で、選手のファンへの“信用”は多少なりとも裏切られただろう。

 ここ最近、ファンに関する問題が続発している。中日で言えば、数日前に松坂大輔投手や根尾昂内野手のサイン入りグッズがネットオークションで転売されていることが問題に。球団が注意を促す声明を出したほどだ。サインをもらえなかったファンが選手に対して暴言を吐くこともあったし、選手が自らのSNSでファンへの“要望”を発信することもあった。

無理にサインをもらおうとするファン、輪の前方に小さな子供がいてもお構いなしの人も…

 キャンプ地での“危険”は、なにも中日だけに限ったことではない。各球団が行うキャンプでも屈指の人出となるソフトバンクのキャンプ地でも「危険だな」と思うことは度々ある。ソフトバンクの選手はファンサービスに積極的だ。練習が全て終わる頃になると、時間の限りこそあれ、キャンプ地のそこかしこで選手がペンを走らせている。

 ただ、それが有名選手になればなるほど、危険がつきまとう。多くのファンが殺到し、警備員が制止しても、止まらない。輪の後方から身を乗り出し、腕を突き出して、無理矢理にでもサインをもらおうとする人もいる。警備員が「押さないで」と言っても、聞くことなく、輪の前方に小さな子供がいてもお構いなしの人も。エリアを区切るポールが折れることも頻繁にあり、選手自身が危険を感じてサインを止めることもある。

 こういう時だからこそファンの“モラル”について考えるべきではないだろうか。もちろん大多数のファンが、これに当てはまらないことは誰もが分かっている。だが、心ないファンがごく僅かだが、存在していることも事実だ。決してファンサービスは止めるべきではない。選手がファンを、そしてファンが選手を思いやり、気遣うこと。それができなければ、その先には悲しい結末が待っている。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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