「地獄のループ」から脱出へ パチスロ、借金、窃盗…「もう惨めな人生は嫌」 長崎市の回復施設に暮らす ギャンブル依存症の男性

「もう惨めな人生は嫌」と語るギャンブル依存症の男性=長崎市内

「ギャンブル依存症」が疑われる人は全国に約320万人と推計される。「自業自得」と突き放されがちだが、借金や家庭崩壊、犯罪行為-など周囲を巻き込みながら破滅的な道をたどるケースも少なくない。依存症からの回復を目指す長崎市の男性を取材した。

 群馬県出身で現在、長崎市で暮らす男性(28)がパチスロにはまったのは21歳の時。好奇心で立ち寄った店で、元手2千円が数時間で8万円になった。「楽勝じゃん」。この勝利体験が男性を泥沼に引きずりこんでいく。それから、暇さえあればスロット台の前に座った。
 たまに勝っても負けることの方がはるかに多い。バイト代をつぎ込んで金がなくなると、消費者金融で借金を重ねた。パチスロの「必勝法詐欺」に引っかかり100万円をだまし取られたことも。「借金はパチスロで勝って返す」。本気でそう考えていた。
 借金は約200万円まで膨れ上がり、両親に返済を肩代わりしてもらった。「二度とするな」。父親に厳命されたその日もパチスロに行った。いくら負けたかは忘れてしまった。でも、気持ちがスッと晴れたことだけは覚えている。
 両親に金銭管理され、家族の財布から金を盗んだり家財道具を売り払ったりして金を工面した。スロットを打ちたい一心だった。やがて雑貨・ゲームの買い取り・販売専門店で商品を万引し、それを別の店舗で売却する行為を何十回も繰り返すようになった。
 23歳の時、窃盗容疑で警察に逮捕され、起訴猶予処分に。釈放された翌日、両親に連れられ、山梨県のギャンブル依存症回復施設に入所した。2年弱生活したが、他の入所者の金を盗んだのがばれて施設を飛び出した。またもや盗品を換金してパチスロをしていたが、警察に再び逮捕され、今度は執行猶予付きの有罪判決を受けた。
 抜け出したくても抜け出せない「地獄のループ」。山梨県の施設の紹介で、25歳の時に長崎市の回復施設「グラフ・ながさき」に入所した。依存症の仲間たちと生活を始めて2年。この間、ギャンブルはしていない。でも「回復したか」と問われると自信はない。
 「パチスロを打ちたくなる衝動はたまにある。だけど、パチスロをしない日を一日一日積み重ねていけばいつか違う自分になれるかもしれない。もう惨めな人生は嫌なんです」。男性はぼそりとそう言った。

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