OB藪恵壹氏が阪神投手陣を徹底分析! 藤浪は「焦らなくていい」、期待は3年目左腕

阪神、MLBなどで活躍した藪恵壹氏【写真:佐藤直子】

昨季のチーム防御率は12球団トップ、藤浪出遅れも「焦らなくてもいいでしょう」

 本来なら、開幕直後で各球場ともに満員のファンで盛り上がっているはずのNPB。だが、今年は世界的に猛威を振るう新型コロナウイルスの影響で、開幕が無期延期となっている。先行きが不透明な中ではあるが、野球が恋しくてたまらないファンのために、阪神、MLBなどで活躍した藪恵壹氏に、今季阪神の戦力を分析してもらった。まずは投手編。

 ◇ ◇ ◇

 昨季、阪神は12球団で最も優れたチーム防御率3.46を記録。先発ローテでは西勇輝(10勝)、青柳晃洋(9勝)が年間を通じて活躍し、軸としてチームを牽引した。移籍2年目の西は、すでに今季の開幕投手に任命され、先発の柱として期待されている。それでは、西を筆頭とする今季の先発ローテはどんな形になるのだろうか。

「1番手が西で、続いて高橋(遥人)、青柳の順番で決まりでしょう。その後は秋山(拓巳)、藤浪(晋太郎)、岩貞(祐太)だと思っていたけど、岩貞は中継ぎに回るので、4番手は秋山だと思います。藤浪はローテに入れたと思うけど、今回の新型コロナの件で少し出遅れますね。残念だけど、チームとしては層が厚いので焦らなくてもいいでしょう。

 先発に左がもう1枚欲しいので、5番手は岩田(稔)か飯田(優也)か。6番手はおそらく外国人投手で回すでしょう。ガンケルはストライクは取れるけど球威がないから、打たれ出したら止まらない怖さがあるんですよね。外国人枠の問題もあるので、ガンケル、ガルシア、スアレスを先発したら抹消、というサイクルで使うんじゃないですかね」

 藪氏は「阪神は去年から『投高打低』で変化なしですよ」と分析するが、「投高」という評価を支えているのが鉄壁の中継ぎ陣だ。昨季の救援防御率は12球団で唯一の2点台(2.70)を記録。174ホールドポイントはセ・リーグでは圧倒的な数字で、2位の中日に32ポイント差をつけている。

充実の中継ぎ陣に太鼓判「入る隙間がないくらい揃ってますよ」

 ただ、昨季に大活躍した岩崎優と島本浩也の両左腕が、今シーズンはそれぞれ右足の張りとオフ中に受けた左肘クリーニング手術の影響でやや調整が遅れているようだが、それでも藪氏は「心配ない」と太鼓判を押す。

「中継ぎも入る隙間がないくらい揃ってますよ。後ろから、守護神が藤川(球児)でセットアッパーがエドワーズと能見(篤史)でしょ。そこに守屋(功輝)、岩貞で5人。望月(惇志)まで入れたら6人。谷川(昌希)もいいけれど、入れるかどうか。あとは飯田をどう使うかですよね」

 人材が足りないのではなく豊富すぎるという贅沢な悩みを抱える阪神だが、その中でも藪氏が注目したいのが、3年目左腕の高橋だという。

「先発だと高橋ですね。彼は普通にいけば15勝くらいできるピッチャー。去年は打線の援護がなかったから3勝9敗だったけど、勝てるピッチャーです。真っ直ぐのキレが抜群にいい。ゆくゆくは岩貞みたいになる可能性は十分ありますね。物静かで黙々とやるタイプ。彼が今年のキーマンだと思いますよ」

 投手陣は昨季と変わらず安泰のようだが、「ピッチャーが頑張ってもね」と藪氏は続ける。

「去年はチーム防御率3.46で、これでも優勝できないんですよ。原因は明らか。チーム得点が536点で、パ・リーグ最下位のオリックス(544点)より少ない。12球団で最下位ですからね。打てないと勝てませんね」

 それでは、今季の阪神打線について、藪氏はどう見るのか。この続きは打撃編で。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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