ヘイト反対に61団体 「オール川崎」でネット発足

 在日コリアンを標的にしたヘイトスピーチ(差別扇動表現)が街中で繰り返されている川崎市で、差別から自分たちの街を守ろうと市民ネットワークが立ち上がった。幅広く結集した団体には地域の商店街も名を連ね、差別反対の意思を「市民の総意」として示し、署名活動などを通じて市と市議会に対策を講じるよう求めていく。

 発足したのは「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」。地域で差別撤廃運動に取り組む社会福祉法人青丘社や差別デモへの抗議活動を続ける市民団体クラック川崎などが呼び掛けた。記者会見を開いた18日現在、賛同団体は61を数え、市内を中心に市民団体やNGO、労組、各政党市議団のほか、在日の集住地域にある桜本商店街振興組合も加わった。

 市内ではJR川崎駅前の繁華街を中心に2013年5月から11回の差別デモが行われ、31日にも予定されている。市民ネットワークは「共に生きる街づくりへの重大な挑戦」と受け止める。クラック川崎の前野公彦さん(48)は大阪市が15日に制定したヘイトスピーチ抑止条例を引き合いに「人権問題と同時に地域での暮らしを脅かす問題。川崎市も具体的な規制の方法について考える段階にある」と話した。

 23日には活動の第1弾として市民集会を市労連会館(川崎区)で開く。ヘイトスピーチ反対運動に取り組む「のりこえねっと」共同代表の辛(シン)淑玉(スゴ)さんの講演などがある。午後1時から。◆子ども守るため闘う 市民ネットワーク結成に向けた一つの契機となったのが昨年11月に行われた差別デモだった。在日コリアンが多く暮らす川崎市臨海部で初めて行われ、差別主義者の一団が「半島に帰れ」と連呼しながら街中を練り歩いた。

 「なぜ言葉でわれわれを殴るのか。そんないわれはない」。18日に記者会見した趙(チョウ)良葉(ヤンヨプ)さん(78)は声を震わせた。徴用された父を追って海を渡った在日1世。戦後は夫と運送業を営んできた。「戦中から日本に貢献してきた在日のことを理解していないのか」 在日3世のペェ・平舜(ピョンスン)さん(41)も「差別との闘いはいつまで続くのか」と嘆いた。地域では指紋押なつ拒否運動など差別撤廃に向けた取り組みが盛んに行われ、両親はその先頭に立ってきた。

 地元で保育士として働き、自身も2児の母に。父母がそうであったように子どもたちには民族や文化の違いこそ尊いと教えてきた。「ヘイトスピーチは多様性を否定する。そんなデモを子どもたちに見させるわけにはいかない」

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