今季ならではの戦い方? 鷹・工藤監督が描く先発6人と第2先発の重要性

ソフトバンクのマット・ムーア、東浜巨、和田毅(左から)【写真:藤浦一都】

第2先発をブルペンに置く意味「最初の1週、2週は先発が長いイニングとはいかない」

11日のオリックスとの練習試合後、ソフトバンクの工藤公康監督は開幕ローテを担う6投手が決まったことを明らかにした。顔触れを指揮官自ら明かすことはなかったが、「皆さん想像つくでしょ」と語って笑顔を浮かべていた。

注目されていたソフトバンクの開幕ローテ。6月19日の開幕投手に決まっていた東浜巨投手に加え、ベテランの和田毅投手、新助っ人のマット・ムーア投手は既に当確していた。そして、この日までにリック・バンデンハーク投手、石川柊太投手、二保旭投手の3人が残る3枠に収まった。

ローテ争いの中にいた昨季新人王の高橋礼投手、そして若い松本裕樹投手は第2先発の役割として中継ぎ待機することになった。ただ、この2人をあえて中継ぎに置くことに、新型コロナウイルスによって開幕が遅れて迎える今シーズンの序盤の戦い方における工藤公康監督とホークス首脳陣の考えが滲んでいる。

この日、先発ローテ6人が決まったことを明らかにした工藤監督。松本と高橋礼の起用法について「ちょっと最初の1週、2週は先発投手がなかなか長いイニングとはいかない、すぐに100球とはいかないと思うので、そういう中で球数は増やしていくんですけど、どうしても短くなってしまった時に2イニング、3イニングいた投手がいた方がいい」と語り、序盤の戦い方を想定した。

6月19日に開幕を迎える今シーズン。練習試合が再開されたのは6月2日で、その期間は2週間、12試合となっている。1週間に1回、マウンドに上がる先発投手にとっては登板機会は2度、間隔を詰めても多くて3回しか登板できない。通常のシーズンでは4回ほどの登板機会があり、段階的にイニング数、球数を増やしていき、最終的に7回100球以上を投げて開幕に状態を整える。

ソフトバンク・高橋礼【写真:藤浦一都】

今季の特殊な事情を考慮、調整期間短い先発投手の状態を考慮した策

ところが、この2回ほどの登板では調整期間としては決して十分ではない。ソフトバンクの投手陣もだいたい70球から80球程度しか投げていない。12日の広島戦で先発予定の東浜も、開幕1週間前の登板にもかかわらず、メドは80球ほど。急ピッチで仕上げさせるのではなく、調整段階の途中で開幕を迎える形になっている。

そのため、工藤監督らは開幕1週目、2週目あたりまでは、先発投手であっても球数が多くならない範囲で降板させ、継投でつないでいく戦い方を想定している。通常の中継ぎ陣だけでは、中継ぎに負担が多くなる。そのため、高橋礼と松本の2人をブルペンに置き、第2先発として待機させるプランを描いた。

高橋礼は左太もも裏の肉離れから復帰したが、まだ本調子ではない。無理に先発させるのではなく、第2先発として短いイニングを投げさせて、その中で本来のボールを取り戻していってもらう狙いもある。シーズン序盤は先発投手が4、5回、そして第2先発とリリーフ陣のリレーで戦うことになる。

幸いにも、今季は1軍の出場選手登録枠が31人に、ベンチ入り人数も26人に拡大される。そのため、投手陣に多めに枠を割いて、十分な投手の人数をブルペンに確保することも可能となる。本来ではベンチに置いておきづらい第2先発を起用することも、これが可能にしてくれる。開幕後しばらくすれば、高橋礼とエースの千賀滉大が先発陣の中に戻ってくるだろう。

4年連続日本一ももちろんだが、まずは3年ぶりのリーグ優勝を目指さなければならないソフトバンク。工藤監督とコーチ陣で考え抜いたローテと投手起用プラン。スタートダッシュが鍵を握るとされる今季、まずはこの戦い方でスタートを切る。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

© 株式会社Creative2