元燕コーチだから分かるヤクルト救援陣の蓄積疲労 「思い切って休ませる勇気も…」

ヤクルト・高津臣吾監督【写真:荒川祐史】

ヤクルトは一時5点リードも3番手・梅野が崩れた

■ヤクルト 5-5 巨人(24日・神宮)

2位のヤクルトは24日、神宮球場で首位の巨人を相手に延長10回の末5-5で引き分けた。ゲーム差は3.5のまま。2回に大量5点リードを奪いながら、7回に3番手の梅野雄吾投手がつかまって逃げ切れなかった。5回2失点と試合を作ったドラフト2位の吉田大喜投手のプロ初勝利はお預けとなった。

序盤の快勝ムードが一転、8投手でつないだ総力戦を勝ちきれなかった。勝利投手の権利を得て降板した新人に初白星をプレゼントすべく、自慢のリリーフ陣でつないでいく青写真は、7回で途切れた。3点リードの7回にマウンドに上がった梅野は、先頭で迎えた巨人・吉川尚輝内野手に被弾。さらに2死三塁の場面から犠飛で1点差に迫れた直後、丸佳浩外野手にバックスクリーンヘのソロを浴びた。

「真っ直ぐの質がだいぶ落ちているように感じます。同じ球速でも、他のリリーフ投手の真っ直ぐの方が速く見えましたから」

いい状態の梅野を知っているからこそ、厳しい視線になる。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、2018年までヤクルトで2年間、バッテリコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は言う。勝ちパターンの中継ぎを務める21歳の右腕には、開幕からフル回転してきた疲労の蓄積が見て取れるという。

「梅野は、疲労が球に如実に現れる面があります。実際に聞いてみないと分からない部分はありますが、身体的にしんどそうに見えます」。29試合を消化した時点で、すでにチーム最多タイの16試合に登板。シーズン66試合ペースでマウンドを重ねていれば、開幕から1か月たって疲労が出てくるのは無理もないかもしれない。

過密日程が11月まで続く異例のシーズン。目先の無理がたたって、長期離脱になってしまっては元も子もない。「思い切って休ませるという勇気も必要かもしれません。ダメだと言って登録抹消するのではなく、最短で1軍に戻すために疲れを抜いてこいという意味で。今の首脳陣は、それをしっかり分かっていると思います」と野口氏は語る。

梅野とともに清水昇投手は16試合に登板し、スコット・マクガフ、守護神の石山泰稚両投手は15試合。方程式の登板過多気味ではあるが、ブルペンの台所事情はそこまで逼迫してはいない。左腕の寺島成輝、長谷川宙輝両投手の存在感は増しており、野口氏も「今のうちにというのはあるかもしれません。このまま上位を争っていって、シーズン終盤に梅野を欠いて戦う方がつらいでしょうから」と強調。選手起用の上手なやりくりが、首位を追うためのピースのひとつになるのは間違いなさそうだ。(小西亮 / Ryo Konishi)

© 株式会社Creative2