西武黄金期の名手が明かす“秘技”「誰も捕れないところ」に転がしたバント

西武などで活躍した平野謙氏【写真:荒川祐史】

中日、西武、ロッテで活躍した平野謙氏がバントシフトをかいくぐって決めた「忘れられない」シーン

西武移籍1年目から日本シリーズで活躍し、5度のリーグVに4度の日本一に貢献した平野謙氏(野球解説者)は現役19年間で、451個の犠打を積みさねてきた。西武黄金期の強力打線のつなぎ役としてチームを支えた。そんな平野氏に忘れらない1本の送りバントがあると聞き、当時の思い出とその奥義を“図解”していただいた。興味深いバントの技術が飛び出した。

「確か、日本ハム戦で、走者は一、二塁だったかなぁ……」印象に残る送りバントについて聞くと、遠い目をしながら、平野さんは現役時代を思い返した。「昔のことだからなぁ…」と言いながら、日付などは忘れてしまったが、絶対に送りバントをしなくてはいけない場面であったことは忘れもしない。

確実に二塁、三塁に進めないといけない。「ものすごいスピード(のチャージ)で出てくるわけで、見逃しでもすれば、もう自分の打席の近くまで内野手が来ていた。どうしようかなぁと思った」と投手、一塁手、三塁手に徹底したバントシフトを敷かれ、難しい状況に追い込まれていた。

そこで平野氏が思いついた究極の思考は「3人とも捕れるけど、3人とも迷うといところにやろうと。この3人のど真ん中にやった。ピッチャーの前に本当に打球を殺して、ここというところに転がした。捕れるけど、誰も捕れないところ、ですね」と明かしてくれた。

誰も捕れないところとはどこか。平野氏にペンとホワイトボードを使って、図解してもらった。説明によると転がす場所は投手前。チャージしてきた一、三塁手はおそらく投手が処理するだろうと判断しそうな位置。一方、投手はチャージした勢いで、野手が取ってくれるだろうと任せそうなところだ。

「三塁手か一塁手かが、日本ハムの古屋(英夫内野手)で、3人のど真ん中にやったもんだから、古谷に「よくあんなところにやったよな」と後日、言われたことを覚えていますね。自分自身は『よっしゃ、うまくいった』と打球が転がったのを見届けて、一生懸命ですが安心して一塁へ走った記憶があります。人工芝の球場は難しいんですよ」

インタビューの中では歴代2位の451犠打をどのような心境で決めてきたか、練習の意識など、バントの奥義を語っていただいた。バントの名手と言われる職人は、どんな状況でも、“送って当たり前”という周囲の目がある。重圧の中で平然と決めている。平野氏のこの“究極の送りバント”は決してマネのできない高度な技術であった。

【動画】通算451犠打の平野謙氏が図解! 「誰も捕れない」ところへ転がした忘れない送りバントと極意とは?

【動画】通算451犠打の平野謙氏が図解! 「誰も捕れない」ところへ転がした忘れない送りバントと極意とは?

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