【高校野球】拓大紅陵コールド発進 和田監督&飯田コーチ“元プロコンビ”の利点とは?

拓大紅陵・和田監督【写真:宮脇広久】

プロ経験者だから導ける近道 「欠点をなくすより長所を生かす」指導法

高校野球千葉大会は4日、市原市のゼットエーボールパークで第8地区2回戦が行われ、元ロッテ投手の和田孝志氏が監督、元ヤクルト外野手でゴールデングラブ賞7回を誇る飯田哲也氏がコーチを務める拓大紅陵が初登場。市原八幡を11-2の7回表終了コールドゲームで下した。

13安打に8盗塁と足も絡めて13得点。それでも和田監督は、コロナ禍で5月いっぱいまで全体練習自粛を余儀なくされた苦難の道を振り返り、「6月1日からようやく練習を再開しましたが、今度はご存知の通り天候が悪く、思うような練習ができませんでした。うちは100人の大所帯(部員94人=マネジャーを除く)なので、密接を避けるのにも苦労しました」と吐露した。

和田監督は拓大紅陵、東洋大を経て、1992年ドラフト3位でロッテに投手として入団。現役10年間で通算72試合2勝3敗、防御率3.67の成績を残した。現役引退後、ロッテのスコアラー、打撃投手、2軍投手コーチ補佐などを歴任し、2016年に母校・拓大紅陵のコーチとして復帰。昨年の夏の大会終了後に監督に昇格すると、同年秋の千葉県大会で準優勝を果たした。今春からは同校OBで2年先輩の飯田氏を迎えている。

春4回、夏5回の全国大会出場を誇る拓大紅陵だが、04年春を最後に甲子園から遠ざり、夏に限れば02年が最後。最近は県内の有力な中学生が習志野、木更津総合といった常連校に流れる傾向が強まっている。そこで、和田監督と飯田コーチの“元プロコンビ”に名門復活の期待が寄せられているのだ。

高校生を指導する上で、“元プロ”の利点はどんなところにあるのだろうか? 和田監督は「むしろ、プロは技術のある選手の集まりですが、高校生は3拍子そろった選手がなかなかいない。長所を生かしながらチームを組んでいくことが大事だと感じています」と相違点を強調した。さらに「毎年甲子園に出ているようなチームであれば、3拍子とはいかなくても、打てて走れるとか2つはそろっていたりするけれど、ウチはそうはいかない。なおさら、欠点をなくすよりも長所を生かす方が結果につながりやすいと思います」と力説するのだった。

「3年生をできるだけ試合に出して、野球を楽しませてあげたい」

特に今夏は、コロナ禍で甲子園大会が消滅し、県大会のみ代替大会となった。ルールも例年と違い、ベンチ入りメンバー20人を試合ごとに自由に変更できる。初戦のこの日、拓大紅陵のベンチ入り20人は全員3年生だったが、県内屈指の右腕として知られるエースの竹内将悟投手は、ベンチにも入っていなかった。

「(竹内らより)先に出してあげたい選手がいたということです。今大会は3年生をできるだけ試合に出して、野球を楽しませてあげたい」と和田監督。「今のウチには、木更津総合さんなどと違い、(中学時代は)軟式野球もお遊び程度にしかやったことがない一般の子もいます。今日のメンバーのうち9人くらいはそういう子でした。代替大会となったことで、そういう子も出してあげられる大会になった」と説明。今大会の目標を「みんなで1つでも多く勝つこと」と表現した。

もっとも、選手たちの目標はもっと明確だ。主将で中堅手の篠田は「(甲子園大会がなくなって)落ち込んでいる者が多かったですが、代替大会があるということで気持ちを切り替えました」と語り、「自分たちは昨年の秋の大会で準優勝しているので、この夏は絶対に負けられない。必ず優勝しようと思います」と言い切った。

この日、飯田コーチはネット裏の観客席で、スコアブックをつけながら観戦していた。あくまで“部員100人一丸”を強調する元プロコンビが、例年にない特殊な大会でチームをどう導くか。今大会は連合チームを含む158チームが8地区に分かれて戦った後、各地区の優勝チームによる決勝トーナメントが行われる。拓大紅陵の次戦は7日午後2時開始予定で、翔凜と対戦。順当に勝ち進めば、第8地区決勝で木更津総合と当たる。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2