元阪神エースから4番・大山悠輔に期待の檄 雑音は「とにかく打って黙らせろ」

阪神・大山悠輔【写真:津高良和】

藪恵壹氏が大山にかける大きな期待「球団として一流選手に仕上げていかないと」

■広島 2-1 阪神(8日・マツダスタジアム)

阪神は8日、敵地・広島戦に1-2で敗れた。先発・西勇輝投手が初回に先制ソロを許したが、直後の2回表に大山悠輔内野手が同点アーチをかけ、4番打者の意地を見せつけた。

だが、大山にまだまだ満足するなとばかりに愛ある檄を送るのが、阪神OBで元メジャーの藪恵壹氏だ。藪氏は「みんなが打てない大瀬良(大地)投手から一発打ったという意味では、4番の働きをしましたね」と評価する一方、1点を追う8回2死三塁で遊撃フライに倒れた場面を指し、「あそこで打ってこその4番」と尻を叩く。

「ドラフト1位で入った高山(俊)、大山を育てるのは至上命題。球団として一流選手に仕上げていかないと。これから30代に向かって、選手としては脂が乗る時期ですよ」

大山は開幕当初、三塁のレギュラーをマルテに譲っていた。だが、マルテの故障により得たチャンスを生かし、今では「4番・三塁」が定位置となった。大山の定着に合わせてチームは勝ち星を重ね、開幕ダッシュに失敗したが、勝率を5割に戻すことに成功した。

「初球打ちで結果を出す4番という、大山選手オリジナルの形を作り上げて」

4番打者として長く君臨することを期待される大山だが、さらに大きな存在になるために見えてきた課題も多い。その典型が、この日の8回に見せた遊飛だったという。

「あそこをぶち破っていかないと。あそこで打てたら『大山で勝った』ということになりますから。もちろん、同点ホームランは良かった。でも、さらに成長するには8回でもう1本ヒットを打ちたい。1本打ったら2本、2本打ったら3本、3本打ったら4本。先日、元横浜の鈴木尚典さんに話を聞いた時、3安打しても4打席目に凡打したら、それに腹が立って眠れなかった、と言っていました。それくらいでなければ、2年連続首位打者にはなれませんよ」

もう一つ、藪氏が求めるのは、大山ならではのオリジナル性を出すことだ。

「今、周囲からは『初球打ちするのは4番としては……』なんて声が聞こえてきますが、それは打ってしまえば何も言われない。初球打ちで結果を出す4番という、大山選手オリジナルの形を作り上げて、追い求めていけばいいんですよ。初球でもカウント3-2でも関係ない。自分の形を見つけて極めるのが一番。とにかく打って黙らせろ、と。立場としては、もうそこまで来ていますから、あとはしっかりチームを勝ちに導いてほしいですね」

長らく阪神の4番を任された掛布雅之氏も、誰の真似をするでもなく掛布の形を作り上げた。大山の形が作れるか。若き4番打者の挑戦は続く。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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